センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

88話 アギト! 私のいうことが聞けんのか!

 88話 アギト! 私のいうことが聞けんのか!

「現状のルールで、コレを壊すことは、理にも利にもかなっていない。事故であれ、故意であれ、壊したとなれば、当然、賠償金を支払っていただきます。その額は、先ほどお兄様がコレに提示なされた額の『10倍』はいただきますから、そのおつもりで」

 そんなロコの『尋常ならざる宣言』を受けて、
 アギトは思う。

(安いものかもしれない……まだ幼いこの時期に、コレを殺しておけるのならば……その代償として『数十兆』程度の損失は……まだ……)

 アドレナリン全開のバリバリ戦闘脳の興奮状態なので、
 『まともな判断』は下せていない。

 さすがに20兆はいきすぎなのだが、
 極限状態における脳ミソで、正常な損得勘定は不可能。

 現在、アギトの脳内にあるのは、
 『ゲン・フォースの抹殺』のみ。
 その為の『必要経費』は青天井。

「殺しはしないさ。そういうルールだろう? わかっているさ……というわけで、ロコ……どきなさい」

 冷静を装って、
 しかし、明らかに殺気だっている『血走った目』でそういうアギト。

「殺す気満々の顔で何をおっしゃっているのやら……認めるわけにはいきません」

「どけよ、ロコ……なんなら……」

 そこで、アギトは、まっすぐな殺意をロコに向けて、

「ここで、まとめてやってやろうか……いや、もはや、外聞(がいぶん)など気にせず、まとめてやっておくべきか……」

 ぶつぶつと、
 アギトは殺意をむき出しにする。

 ドバドバのアドレナリンに支配されて、
 周囲がまったく見えていない。

 感情のマリオネット。
 ないまぜになった情動が、アギトの全身を蝕んでいく、

(今ならやれる……間違いなく)

 ロコはまだ幼女で、『先天的支援型』でもあるため、
 戦闘系のステータスがのきなみ低い。

 対して、アギトは、気力・体力ともに充実している20代で、
 かつ、バリバリの『アタッカータイプ』であるため、
 純粋な殴り合いならば、ロコを殺しきることなど造作もない。

(今のうちに……殺しておく……それが最善)

 覚悟を決めると、
 アギトは、ロコとゲンを殺すために魔力を練り上げ、
 そして、

「死ね、イカれたクソガキども……」

 その練り上げた魔力を叩き込もうとした、

 ――その時、



「落ち着け、アギト」



 パァァァンと、甲高い音が亜空間内に響いた。
 アギトの頬が赤くなってジンジンと響く。

 殴られたと理解し、頬の痛みを感じるまでのタイムラグは二秒。

 アギトの頬を殴ることができる者は、物理的にも地位的にもかなり少ない。

 アギトの父である『全宮テラ』は、
 アギトの目をにらみつけ、

「さすがに、熱くなりすぎだ。まわりを見渡せ」

 アギトは、何も言わず、
 まっすぐにテラをにらみ返す。


(見えているさ……だからこそ……)


 『正論を背負っている時』の人間は強固。
 ゆえに、こころは変わらない。

 ――けれど、

「なんだ、その目は……アギト」

「……ぃえ……なにも……」

 『意思の強行』は出来そうにない。

 生まれた時から、ずっと父の背中を追ってきた。
 だから、テラの強さは骨身にしみている。

 テラにやめろと言われたら、やめるしかない。

(……愚かしい……『ここで止めた』ということは……父は理解できていない……ゲン・フォースの異常性……コレとロコがセットであるという事実のヤバさが……父には理解できていない……止めるべきじゃなかったんだ……あんたは……黙ってみているべきだった……クソ老害……バカ親父……)

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