センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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85話 混ぜるな! キケンが危ない!

 85話 混ぜるな! キケンが危ない!

(折れない……こいつは……たとえ永遠を積んでも……)

 この瞬間、アギトは、
 『ダギーの気持ち』が十全に理解できた気がした。

 他者を理解できたのは、初めてだな。
 なんて、そんなことを思いながら、
 心の中で、

(このガキは、完全に壊れている。ロコにも匹敵する歪み方……)

 ロコは稀代のキ〇ガイ。
 そんなロコに匹敵するサイコパス。

 それが目の前にいるこのガキ。
 ゲン・フォース。

(きっと、このガキは……いや、きっとではなく、間違いなく……どれだけの時間を使おうと……このガキの『心』は、永遠に『ひどく歪んだまま』であり続ける……)

 高次の理解。

 数分の拷問、
 1回の反撃。
 ――『その二つ』だけで、アギトは、ゲンを理解した。

 もちろん『すべて』じゃない。
 アギトの『中』に浸透したのは、
 『ゲン・フォースというブッチ切った異端』が有する『異常性の一部』だけ。

 それでも、
 わかることは確かにあった。
 ゲンの異質を解したことによりハッキリと思ったこと、
 それは、

(危険だ……この異質は、届きうる……)

 未来に対する不安。
 まだ漠然としているが、
 しかし、シルエットは見えた。

(コレとロコは、混ぜると危険……)

 『ブレーキになりえる』のであれば、むしろ歓迎すべき逸材。
 しかし、ロコは止められない。
 たとえ、誰が何をしようと決して暴走をやめない。

 その前提があるがゆえに、
 アギトは、ゲン・フォースという逸材に対し、
 『無為な破滅の助長を促す歯車』という烙印を押さざるをえない。

(このまま、この壊れた二匹を放置していたら……未曾有の災厄に発展する可能性がある!)

 警戒心と恐怖心が混ざり合い、
 だから、アギトは、

(殺す! 殺すべき! 今のうちに、片方だけでも殺しておかないと! コレを生かしておくのは、危険が危ない!!)

 ほとんど反射的に、流れるように、
 アイテムボックスに手を突っ込んで、
 自身が有する最強の剣を抜いて、


「剣気ランク20!!」


 自身に使える最強のバフ魔法を用いて、
 そして、

「八連空斬ランク21!!」

 最強の攻撃魔法で、
 強引に、ムリヤリに、ゲンを終わらせようとした。
 外聞もへったくれもない乱暴極まりない一手。

 エゲつない火力の連続飛翔斬撃が、
 空間を跳躍しつつ、
 ゲンを裂こうと襲い掛かる。



(ぁ、死んだ……)



 走馬灯がBGMになった。
 ゲンは、自分の死を確信する。
 トラックにひかれた時と同じ。

 驚くほどスローな時間。
 10秒以上に感じたコンマ数秒。

 この極限状態を打破できる一手など、今のゲンは有していない。
 ゆえに不可避。
 完全に終了。

(――何か、回避の手段――)

 一応、極限級危機的状況下ゆえ、正常生理反射として、
 頭脳は、異常なほど豪速で回転している。
 一応、まだ、ゲンはあきらめていない。
 だが『あきらめないこと』と『対処できるか否か』は別問題。

(――緊急回避。横に飛べ。体をひねれ。――間に合わない)

 死がゲンをさらっていく直前、
 『体感的には永遠』の『コンマ数秒』の中で、

(魔力で相殺。差がありすぎる。剣で合わせる。今の技術では不可能。――不可能でもやれ。――ぃや、そういう問題じゃない。このあまりに『明瞭で不可避な死』は根性で埋められる領域じゃない)


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