センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
80話 なにを悩む必要がある?
80話 なにを悩む必要がある?
「ロコの下についていても、いいことなど何もない。アレは今後も、お前を、今日のような目に遭わせ続けるだろう」
アギトは、とうとうと、
「あのバカな妹は、今後もずっと、みずから無意味に『あてのない地獄』に向かって突き進み続ける。お前がいくら矯正・修正しようとしても、当然のように、そのすべてを水の泡にするだろう。――だが、私なら、お前を大事に扱う。お前には『投資』をする価値がある。お前の可能性は大きい」
ゲンの心に語り掛ける。
アギトは、つい数分前の『ダギーとゲンの闘い』を思い出しながら、
「ダギーとの闘いで、貴様は、大きな可能性を示した。もちろん、今はまだ蕾。だが、お前の蕾はとてつもなく美しい」
ダギーが『唐突に降参を口にした』という『受け入れたくない現実』に対し、
瞬間膨張した『当たり前の怒り』で感情が沸騰し、
真っ赤になって負の情動だけを喚き散らしてしまったが、
しかし、あの時、あの瞬間、
『ダギーの剣を折ってみせたゲン』に対し、
――何も感じていなかったわけではない。
(このガキの資質。ただの『早熟』で、今後の『伸びしろ』はさほどない――そういう可能性もある。だが、もし『本物』であるのならば、賭ける価値は十分にある)
それなりに高純度の『虹気』がつかえるレアで、
ダギーを折ってみせた破格の精神力を持ち、
五歳という若さで、すでに『そこそこのグリムアーツ』と、
『悪くない魔法』をいくつか習得している可能性の塊。
平場であれば、『どうしても賭けたい』というほどではないが、
『この状況』においては十分以上に『賭ける価値』がある逸材。
――そこで、アギトは手を差し出して、
「さあ、つかみ取れ。私はお前に投資する。だから、お前も、私に賭けろ。沈みゆく船にしがみつくのはやめろ。お前に『最高の未来』をくれてやる」
すべての言葉を使った。
たたみかけた。
適切な言葉、適切を超えた条件。
迷う理由はなかった。
誰であれ、答えは一つ。
ここでロコを選ぶバカはいない。
そこまでのバカなど、いるはずがない。
――と、ゲンですら思った。
(アギトを選ぶべきだ。それは、当たり前の話)
ゲンは賢くないが、バカじゃない。
ちゃんと頭を使える人間。
ちゃんと生きている人間。
なのに、
(……なのに、なんで悩んでいる……)
ゲンは、自分の心に問いかける。
『なぜだ?』と深く、深く、深く。
(そもそも、どうして、俺は、ロコの剣になりたがっている……)
自分自身に対して問いかけてみたが、
いくら質問しても、
(……わからない……)
答えはまったくかえってこない。
今、この状況で『わかっていること』は一つ。
(ロコはやりすぎた……アギトは本気でキレている。仮に、ここで俺が降参しなかったとしても、アギトは、ロコの死をあきらめない。暗殺者を雇うなりなんなりして、ロコを殺そうとするだろう。俺がアギトなら、確実にそうする。ロコは鬱陶しすぎる)
ロコはもう終わり。
それだけが、現状の現実。
(ロコにつけば、俺も抹殺対象になりうる……というか、アギトの視点だと、ここで降参しないようなバカは、たいがい鬱陶しいから、確実に始末しようとするだろう……ロコについているのは、メリットがなさすぎる)
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