センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
76話 配慮。
76話 配慮。
「己が幸運に感謝しろ。……というより、ここはあえて『貴様の運命力だけは認めざるをえない』と言っておこうか。この私と武を交わせる機会などそうそういない」
言いながら、アギトは全身をオーラで包み込んでいく。
ハンパではない威圧感。
――と、そこで、
ロコが、亜空間内に飛び込んできて、
「お兄様、すでに『そちらの駒(ダギー)』は降参を口にしております。よって、賭けはすでに終わっておりますわ」
明確な態度と口調で『勝負はすでに終わっている』と告げるロコに、
アギトは、
「賭けはお前の勝ちだ……それはゆるぎない」
無理に感情を押さえつけた声でそう言ってから、
一度深呼吸をはさみ、
「私がすでに『全宮の当主』なら、全力でうやむやにして、全てなかったことにしてしまうところだが……『父の目』がある現状では、そうもいかん。あの人は……こういうことに対して厳格だ」
この空間に突入する前、
アギトは父であるテラの様子をチラッとうかがっていた。
正直、さほど期待はしていなかったが、
しかし、見事、『まったくアギトに肩入れする様子がなかった』ため、
アギトは『勝負の結果』に関しては諦めることにした。
テラは王として、厳格に『ルール』を重んじる。
もちろん、『命』や『家』がかかっていれば、
『ルールなど知ったことか』と暴れることもいとわないが、
しかし『子供同士の争いを見守る立場』にある際においては、
徹底的にルールを重んじる。
ゆえに『全宮家にとってなんの益にもならないロコ』にも、
キチンと、家のルール通り、領地と運用費を与えた。
だから、アギトは、すでに諦めている。
すでに、賭けには負けた。
その事実は覆らない。
ならば、なぜ『ここに飛び込んできた』のか。
それは、
『ダギーの降参をなかったことにするため』ではなく、
『感情の置き場を見失ってしまった』ため。
ようするには、衝動的かつ短絡的な情動。
「今から行うのは『貴様の剣』の『程度』を見極める確認作業。私が直々にはかってやる。そのガキが、貴様の剣にふさわしいか否か」
「必要ありません。あたしは自分の目を信じています」
「貴様の意見など聞いてはいない。私が確かめたいから確かめる。それだけの話」
「ワガママがすぎますわね」
「誰に口をきいている。いい加減、黙れ」
そこで両者、にらみ合う。
バチバチと火花が舞う。
その間に割って入ったのは、
「やりますよ……やります」
ゲンだった。
ゲンは、ロコとアギト、両者の様子をうかがいつつ、
絶妙に空気を読んで、慎重に言葉を選びつつ、
「ただし、ルールは『先ほどと同じ』でお願いします。降参した方の負けで……かつ、この戦いの賭け金は、先ほどの闘いで得た金の『半額』……その条件で、いかがです?」
両者にとっての落としどころを提示するゲン。
アギトは、瞬時に、
(このガキ……降参する気か……)
『ゲンの意図』を理解する。
ゆえに、アギトは、
普通に感心しながら、心の中で、
(……こちら側の損失を抑え、『私の留飲を下げる』ことが『主人であるロコにとっても最善』と判断したか……)
ゲンの提案は、ロコとアギト、両方に対する配慮。
『全額を返す』となったら、ロコのメンツがつぶれる。
だからこその半額。
半額でも、許容範囲と言える損害ではないが、
しかし、事実として、600億の損害が300億までひきさがるので、
心理的なストレス圧はその数字分下がることとなる。
ある意味で絶妙なドア・イン・ザ・フェイス。
そして、この判断は……
(私とロコだけではなく、ダギーに対する配慮もみてとれる……)
しっかりと、全方位に対して空気を読んだ一手。
もはや、神の一手と言ってもいい絶妙手。
(これほど整った状況下で、このガキが降参したとしても、それを理由にダギーを咎めることなど出来るわけがない……それをしてしまえば、私は『子供の配慮すら理解できない大バカ』になってしまう。それはありえない)
「己が幸運に感謝しろ。……というより、ここはあえて『貴様の運命力だけは認めざるをえない』と言っておこうか。この私と武を交わせる機会などそうそういない」
言いながら、アギトは全身をオーラで包み込んでいく。
ハンパではない威圧感。
――と、そこで、
ロコが、亜空間内に飛び込んできて、
「お兄様、すでに『そちらの駒(ダギー)』は降参を口にしております。よって、賭けはすでに終わっておりますわ」
明確な態度と口調で『勝負はすでに終わっている』と告げるロコに、
アギトは、
「賭けはお前の勝ちだ……それはゆるぎない」
無理に感情を押さえつけた声でそう言ってから、
一度深呼吸をはさみ、
「私がすでに『全宮の当主』なら、全力でうやむやにして、全てなかったことにしてしまうところだが……『父の目』がある現状では、そうもいかん。あの人は……こういうことに対して厳格だ」
この空間に突入する前、
アギトは父であるテラの様子をチラッとうかがっていた。
正直、さほど期待はしていなかったが、
しかし、見事、『まったくアギトに肩入れする様子がなかった』ため、
アギトは『勝負の結果』に関しては諦めることにした。
テラは王として、厳格に『ルール』を重んじる。
もちろん、『命』や『家』がかかっていれば、
『ルールなど知ったことか』と暴れることもいとわないが、
しかし『子供同士の争いを見守る立場』にある際においては、
徹底的にルールを重んじる。
ゆえに『全宮家にとってなんの益にもならないロコ』にも、
キチンと、家のルール通り、領地と運用費を与えた。
だから、アギトは、すでに諦めている。
すでに、賭けには負けた。
その事実は覆らない。
ならば、なぜ『ここに飛び込んできた』のか。
それは、
『ダギーの降参をなかったことにするため』ではなく、
『感情の置き場を見失ってしまった』ため。
ようするには、衝動的かつ短絡的な情動。
「今から行うのは『貴様の剣』の『程度』を見極める確認作業。私が直々にはかってやる。そのガキが、貴様の剣にふさわしいか否か」
「必要ありません。あたしは自分の目を信じています」
「貴様の意見など聞いてはいない。私が確かめたいから確かめる。それだけの話」
「ワガママがすぎますわね」
「誰に口をきいている。いい加減、黙れ」
そこで両者、にらみ合う。
バチバチと火花が舞う。
その間に割って入ったのは、
「やりますよ……やります」
ゲンだった。
ゲンは、ロコとアギト、両者の様子をうかがいつつ、
絶妙に空気を読んで、慎重に言葉を選びつつ、
「ただし、ルールは『先ほどと同じ』でお願いします。降参した方の負けで……かつ、この戦いの賭け金は、先ほどの闘いで得た金の『半額』……その条件で、いかがです?」
両者にとっての落としどころを提示するゲン。
アギトは、瞬時に、
(このガキ……降参する気か……)
『ゲンの意図』を理解する。
ゆえに、アギトは、
普通に感心しながら、心の中で、
(……こちら側の損失を抑え、『私の留飲を下げる』ことが『主人であるロコにとっても最善』と判断したか……)
ゲンの提案は、ロコとアギト、両方に対する配慮。
『全額を返す』となったら、ロコのメンツがつぶれる。
だからこその半額。
半額でも、許容範囲と言える損害ではないが、
しかし、事実として、600億の損害が300億までひきさがるので、
心理的なストレス圧はその数字分下がることとなる。
ある意味で絶妙なドア・イン・ザ・フェイス。
そして、この判断は……
(私とロコだけではなく、ダギーに対する配慮もみてとれる……)
しっかりと、全方位に対して空気を読んだ一手。
もはや、神の一手と言ってもいい絶妙手。
(これほど整った状況下で、このガキが降参したとしても、それを理由にダギーを咎めることなど出来るわけがない……それをしてしまえば、私は『子供の配慮すら理解できない大バカ』になってしまう。それはありえない)
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