センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
72話 命の器。
72話 命の器。
「剣で来い……そっちも見せてみろ」
「……」
ゲンは、一瞬、迷ったが、
「……まあ、いいか」
ゆっくりと剣を構える。
「スキだらけだな。剣の方は、まだまだ器すら出来上がっていないといったところか」
「そうですね……2歳のころから最近まで、拳ばっかり磨いていたもので。剣の器が出来上がるのはもう少し先でしょう」
「2歳のころから……ね」
一度、そうつぶやくと、
ダギーは、グンと踏み込んだ。
ゲンの目でもギリギリ追える速度。
すでに、ダギーは、ゲンの『程度』をはかり終えている。
ゆえに、
「うらぁ!」
鋼のかちあう音が響く。
本当に、ギリギリのところで、ダギーの剣に自分の剣をあわせるゲン。
「足運びがお粗末だな」
軽く足を払われて、無様にすっ転ぶゲン。
そんなゲンを見下ろしながら、
ダギーは、
「流(りゅう)があいまいだ……剣は、一個の挙動で完結する単次元的な攻撃ではない」
別に、正拳突きだって、一個の挙動で完結するわけではないが、
しかし、技と技の『流動』が大事になってくる剣舞においては、
正拳突きにかけた時間と同じかそれ以上の積み重ねを経ないと、
『安っぽいチャンバラ』のままで終わってしまい、
上級者を相手にすることなど夢のまた夢。
「呼吸が単調すぎるんだよ……」
ダギーは、まっすぐの中段構えを取り、
すり足で距離をはかりながら、
「俯瞰の視野も狭い……」
死角にもぐりこんで、
柄(つか)の先を、ゲンの腹部にぶちこむ。
「ぐえっ!」
「乱(みだ)せよ、自分を……整えて、乱して……そうやって、いつしか見えてくるシルエット……それがお前の型となり、型を極めた先に、鮮やかな流(りゅう)が、その魂と体に宿る。それが剣の器。……命の器……」
言葉と技。
技と言葉。
その二つが複雑に織り成って、
ゲンの中で『器』の『元』になっていく。
ダギーの一挙手一投足が、
ゲンの中にしみこんでくる。
高次の指導手。
目覚めを誘発する一手。
「ゲン・フォース……お前の剣は、まだ『芯』を知らない」
加速からの刺突。
受け止めたゲンの剣にヒビが入った。
パキィインッッ!
と、へし折れる、ゲンの剣。
(折れて……砕けて……乱れて……)
ゲンは、折れた剣をその場に捨てて、
即座に、アイテムボックスから、
予備の剣を取り出すと、
「ふぅう……」
全力で精神を統一させる。
ダギーと戦っていると、
何かが見えてくるような気がした。
(もっと……)
深く、深く、
自分の奥へと潜っていく。
(――もっと……っ)
呼吸が止まった。
酸素を望まない視点。
厳かな解糖(かいとう)。
電子伝達系に与える猶予。
視界がクリアになって、
全身のナトリウムイオンチャネルが開く。
ゲンの血肉がピリピリと沸いた。
「来いよ、ゲン・フォース」
真正面で剣を構えるダギー。
ゲンの心が一つに収束する。
「――ゲン・エクセレント――」
体幹を主軸とした円運動。
両足の母指球に力を込めて、
ゲンは、自分の剣とひとつになった。
ひそかに練習していた必殺の剣――『ゲン・エクセレント』。
言ってしまえば、ただのナナメ切りだが、
『吐くほどダサい名前』という極端なアリア・ギアスが乗ったその一撃は、
――ギィインッッ!!
と、豪快な音をたてて、
ダギーの剣を砕いてみせた。
勢いを殺しきることが出来なかったせいで、
ゲンの剣もへし折れる。
砕け散った、互いの剣。
ダギーは、折れてしまった自分の剣に視線を落としてから、
一度、フっと微笑んで、
「……降参だ」
静かに、敗北を宣言した。
「剣で来い……そっちも見せてみろ」
「……」
ゲンは、一瞬、迷ったが、
「……まあ、いいか」
ゆっくりと剣を構える。
「スキだらけだな。剣の方は、まだまだ器すら出来上がっていないといったところか」
「そうですね……2歳のころから最近まで、拳ばっかり磨いていたもので。剣の器が出来上がるのはもう少し先でしょう」
「2歳のころから……ね」
一度、そうつぶやくと、
ダギーは、グンと踏み込んだ。
ゲンの目でもギリギリ追える速度。
すでに、ダギーは、ゲンの『程度』をはかり終えている。
ゆえに、
「うらぁ!」
鋼のかちあう音が響く。
本当に、ギリギリのところで、ダギーの剣に自分の剣をあわせるゲン。
「足運びがお粗末だな」
軽く足を払われて、無様にすっ転ぶゲン。
そんなゲンを見下ろしながら、
ダギーは、
「流(りゅう)があいまいだ……剣は、一個の挙動で完結する単次元的な攻撃ではない」
別に、正拳突きだって、一個の挙動で完結するわけではないが、
しかし、技と技の『流動』が大事になってくる剣舞においては、
正拳突きにかけた時間と同じかそれ以上の積み重ねを経ないと、
『安っぽいチャンバラ』のままで終わってしまい、
上級者を相手にすることなど夢のまた夢。
「呼吸が単調すぎるんだよ……」
ダギーは、まっすぐの中段構えを取り、
すり足で距離をはかりながら、
「俯瞰の視野も狭い……」
死角にもぐりこんで、
柄(つか)の先を、ゲンの腹部にぶちこむ。
「ぐえっ!」
「乱(みだ)せよ、自分を……整えて、乱して……そうやって、いつしか見えてくるシルエット……それがお前の型となり、型を極めた先に、鮮やかな流(りゅう)が、その魂と体に宿る。それが剣の器。……命の器……」
言葉と技。
技と言葉。
その二つが複雑に織り成って、
ゲンの中で『器』の『元』になっていく。
ダギーの一挙手一投足が、
ゲンの中にしみこんでくる。
高次の指導手。
目覚めを誘発する一手。
「ゲン・フォース……お前の剣は、まだ『芯』を知らない」
加速からの刺突。
受け止めたゲンの剣にヒビが入った。
パキィインッッ!
と、へし折れる、ゲンの剣。
(折れて……砕けて……乱れて……)
ゲンは、折れた剣をその場に捨てて、
即座に、アイテムボックスから、
予備の剣を取り出すと、
「ふぅう……」
全力で精神を統一させる。
ダギーと戦っていると、
何かが見えてくるような気がした。
(もっと……)
深く、深く、
自分の奥へと潜っていく。
(――もっと……っ)
呼吸が止まった。
酸素を望まない視点。
厳かな解糖(かいとう)。
電子伝達系に与える猶予。
視界がクリアになって、
全身のナトリウムイオンチャネルが開く。
ゲンの血肉がピリピリと沸いた。
「来いよ、ゲン・フォース」
真正面で剣を構えるダギー。
ゲンの心が一つに収束する。
「――ゲン・エクセレント――」
体幹を主軸とした円運動。
両足の母指球に力を込めて、
ゲンは、自分の剣とひとつになった。
ひそかに練習していた必殺の剣――『ゲン・エクセレント』。
言ってしまえば、ただのナナメ切りだが、
『吐くほどダサい名前』という極端なアリア・ギアスが乗ったその一撃は、
――ギィインッッ!!
と、豪快な音をたてて、
ダギーの剣を砕いてみせた。
勢いを殺しきることが出来なかったせいで、
ゲンの剣もへし折れる。
砕け散った、互いの剣。
ダギーは、折れてしまった自分の剣に視線を落としてから、
一度、フっと微笑んで、
「……降参だ」
静かに、敗北を宣言した。
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