センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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58話 ブチ殺すぞ、クソガキ。

 58話 ブチ殺すぞ、クソガキ。

「ほんとうにごめんなさい、お兄様。ほら、あたし、ウッカリさんだから、てへ」

 ロコの『非常にわかりやすい態度』を受けて、
 アギトは、

「……っ……」

 全身真っ赤になって、プルプルと震えながら、

「……ロコ……」

 全身から、ビリビリと、電流が走った。
 『抑えきれなかった怒り』がこぼれた。

 その波動は凄まじく、
 特殊部隊の面々は、反射的に防御態勢をとった。
 各々、自分に可能な最大級の防御魔法を使って、
 アギトの怒りの波動から身を守ろうとする。

 防御系の魔法を特に会得していないゲンは、
 普通に対応が遅れたのだが、

「……ありがとうございます、ソウルさん」

 即座に、ソウルさんが守ってくれたので、
 特にケガをすることもなかった。

 激しい怒りを向けられたロコは、
 しかし、それでもケロっとした顔で、

「あらあら、お兄様ったら、魔力が漏れていますわよ。おほほ、その年になって、まだご自身の能力を制御できませんの? おかわいいこと」

「……てめぇのせいだろうが……ロコォ……」

「ご自身の制御能力のなさを、あたしのせいにするだなんて……やれやれ、困ったお兄様だこと。次期当主がこのありさま……全宮家の未来は暗そうですわね」

「……」

 ギリリっと奥歯をかみしめる音がフロア中に響いた。
 その音に反比例して、アギトのビリビリとした怒りの波動は、
 グググっと縮小されていく。
 アギトは、どうにか自分を抑え込もうとする。


「すぅう……はぁあ……」


 何度か深呼吸をして、
 丹田に力を込めて、
 自分の全てを整えると、
 アギトは、

「……頭を下げる気は、いっさいないということか……ロコ」

「あたし、ここまでに、二度ほど、謝罪の言葉を口にしているのですが……聞こえませんでした? もし、聞こえなかったというのであれば、もう一度、改めて謝罪いたしましょう。『天然なあたし』の『かわいいウッカリ』のせいで、お兄様の『ほんのりファニーなお顔』に泥を塗ってしまい……本当に……もうしわけございませんでしたっ!」

 そう言ってから、ペコっと頭を下げるロコ。

 言動だけは、一応、謝っている風である。
 大小ともかく、『己の非』を認めてはいる。
 それは間違いない。

 しかし、そこに、心など一ミリもこもっていない。
 本気で謝罪する気などまったくない。
 ――それが、ヒシヒシと伝わってくる謝罪だった。

 誰の目にも明らかな、
 『言葉と態度だけ』の謝罪。

 『全宮ロコという人間の性格』を一ミリも知らない人間でも、
 一発一瞬で『ナメている』とビシビシ伝わってくる謝罪。

 それを受けて、
 だから、当然、

「……ブチ殺すぞ……クソガキぃ……」

 アギトの怒りはさらに加速した。
 今度は、周囲に放散させるようなマネはせず、
 右手に魔力とオーラを集中させる。

 臨戦態勢。
 いつでも飛び出せる状態になったところで、
 全宮テラが、

「……アギト……」

 一言。
 たった一言、息子の名前を口にした。
 それだけで、
 アギトは、

「……っ」

 ビシっと背筋を伸ばして、
 魔力とオーラを霧散させた。


「はぁ……ふぅ……」


 短い深呼吸をはさんでから、
 アギトは、ゆっくりと口を開く。

「父上……いいかげん、ガツンとしかりつけなければ……あのバカは――」

 アギトの言葉を最後まで聞かず、
 テラは、

「わからないだろうな……」

 そう言ってから、
 アギトをにらみつけて、

「だが、それは、この場で成すべきことではない」


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