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32話 反社VS反社。

 32話 反社VS反社。

 シアロリのエリアB支部は、100人ほどのテロリストに襲撃されていた。

 『異常集団ギルティブラッド』VS『完全院家をバッグに持つ極道シロアリ』。

 社会悪どもの泥試合。
 反社同士の無意味な抗争。

 ――『毒組専用パトカー』でシロアリのエリアB支部へと向かう途中、

「バカバカしい……せっかくゴミ共がつぶし合ってくれているんだから、暖かい目で見守っていればいいだろう。なんで、シロアリを助けにゃならんのだ。……『片方が全滅したタイミングで残りをつぶす』――そういう仕事だったら喜んでやってやる」

 副長であるヒジカが、面倒くさそうにそう言ったのを受けて、
 ソウルさんが、

「われわれは全宮ロコ様直属の部隊。ゆえに、『全宮家』が受けた『完全院からの依頼』を無碍に扱うワケにはいかない。今、この瞬間の私たちは、シロアリを守る盾であり剣」

 そう言いつつ、

「とはいえ、クズどものために命を張る必要はない。仕事として――『報告書に記載する数字』のために、何人かは守ってもらいたいところが……決して、命を張ってまで、守ろうとはするな。これは命令だ」

「言われるまでもねぇ。俺は市民を守るお巡りさんであって、ヤクザの犬じゃねぇ」

 ヒジカは、毒組の副長であることに誇りを持っている。
 彼だけではなく、毒組に所属している者は、皆が皆、
 自分は市民を守る剣であるという信念がある。

 だから、本当なら、このような仕事はしたくない。
 だが、信念だけを貫けるほど、この世界は成熟していない。

「報告用の数字は『5』もあれば十分でしょう。出来るだけ『無害そうなカス』だけ残して、あとのカスには死んでもらいましょう」

 オキがそうつぶやいたのを受けて、ヒジカが言う。

「5もいらねぇ。3あれば十分だ。あとは皆殺しでいこう」

 ソウルさんは、二人の物騒な会話を聞き流しながら、

「……」

 黙って目を閉じているだけ。

 そんなソウルさんに、
 隣に座っているゲンが、

「……あんなことを言っていますが、止めなくていいんですか?」

「……実際、3人もいれば十分だろう」

 底冷えする声で、ボソっとそう言ったソウルさん。

 そんな3人の毒組メンバーを後目に、ゲンは、

(まあ……『仕事的』に問題がないなら、別に好きにしてくれればいい。カスが何人死のうと知ったこっちゃない)

 心の中でそう呟いて、流れていく窓の外の景色を眺める。

 ちなみに、この世界の車はガソリンではなく魔力で動くタイプ。
 魔力で動くという点以外は、ほとんど、第一アルファの車と変わらない。
 外見のフォルムも、モーターやエンジンなどの形状も、ほぼ同じ。

 この世界では、大半のテクノロジーが、
 魔力を動力としているという点以外は、
 『まるで第一アルファのデザインをモデルにしているかのよう』に、
 見た目も仕組みも、第一アルファのソレとほぼ同じ。


 ちなみに、テレビなども存在するし、
 それを製造している会社もあるのだが、
 造っている当人たちでさえ、
 『どうして映像が映るのか』はまったくわかっていない。
 あくまでも『五大家』に『造れ』と命令されて造っているだけ。
 それがこの世界における『テクノロジー』の基本。


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