センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

18話 ゲンは繰り返した。

 18話 ゲンは繰り返した。

(……目標としては……五大家の人間に『こいつを殺すのはもったいない』と思わせるくらい強くなること……そうすれば、最悪、俺より強い敵が出てきたとしても『殺すな』と待ったをかけてくれるだろう……)

 WEB小説では、そういう展開もあった。
 五大家の人間は利益を重んじる。
 ゆえに、金の卵を産むガチョウは殺さない。

 金は命より重いが、
 投資家・資本家は、
 『目の前の小銭』より、
 『未来の利益』を重んじる。

(数真とスライムでとことん強くなってから、カジノで稼ぎつつ、五大家の人間に自分を売り込む……ある程度稼げるようになったら、99%割引券で買える最大のアイテムを購入。そこから、努力ポイントを加速させていって、不老不死をゲット……そこから先は自由。そこから先が人生の本番)

 人生の計画表をたてると、
 ゲンは、

「よっしゃ。そうと決まれば、さっそくスライム狩りじゃぁあ!」

 胸の前で両手を合わせ、
 最初に閃壱番としての自分を産み落としてくれた母親とか、
 こっちの世界で一生懸命自分を育ててくれている両親とか、
 自分をこの世界に導いてくれた運命とか、
 なんだかいろいろバグっていて非常に面白いこの世界とか、
 いろいろ、なんやかんやに感謝をしてから、

「――ゲン・ワンダフォオオッ!」

 ダッサイ必殺技名を叫びながら、拳をつきだす。

 パァンとはじけるスライム。
 微笑むゲン。
 入ってくる努力ポイント。

「――ゲン・ワンダフォオオオッ!」

 ゲンは繰り返した。
 延々に、ひたすらに、

 はた目には『こいつ、頭おかしいんじゃねぇか?』と不安になるほど、
 『スライムを殴り続ける』というクソつまらない単純作業を、
 一心不乱に、延々と、ただひたすらに、
 ただ黙々と、途切れることなく、無我夢中で、


「ゲン・ワンダフォオオッ!」


 ――繰り返した。





 ★






 それから一年。
 雨の日であろうと、
 風の日であろうと、
 『んなこと知ったこっちゃねぇ』とばかりに、
 ゲンは、

「――ゲン・ワンダフォ――」

 繰り返した。

 次第に、ゲンの拳は重く、速くなっていく。

 トモダチの一人も作らず、
 おもちゃで遊ぶこともなく、
 ほかの何にも興味を示さず、

 ただひたすらに、
 キ〇ガイのように、

 ゲンは、

「――ゲン・ワンダフォ――」

 狂気的にダサイ必殺技でスライムを狩り続けた。

「ゲン、そろそろ、夕飯の時間……って、お前、またやっているのか」

 そんなゲンの様子を見たソウルさんは、
 呆れた口調で、

「意味があるかどうかはともかく……そうやって、同じことを続けることができる……というのは、一つの才能だな」

 しみじみとそう言った。
 その発言に対し、
 ゲンは、わずかも誇ることなく、
 むしろ、渋い顔で、首を横にふり、

「俺に才能なんかないですよ、ソウルさん。……これだけ繰り返したのに、全然、武の真髄が見えてこない」

「……三歳で武の真髄なんか見えてたまるか」

 ちなみに、
 スマホから飛び出してくるスライムは、
 どうやら『ゲンの目』にしか見えていないらしく、
 はた目には、
 ゲンがひたすらに『型』の練習をしているようにしか見えない。


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