センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

84話 救いのヒーロー。

 84話 救いのヒーロー。

『苦しい……辛い……これは、もうムリ……なぜ、私がこんな地獄に晒されている……私は、ただ……多くの命を守るために……必死に、これまで、ずっと、ずっと……なのに……なんで、こんなことに……どうして……苦しい……もう、イヤだ……』

 バグの性能はケタ違いだった。

 圧倒的な火力、圧倒的な魔力。
 おまけに、耐久が極端に高いタイプで、
 一体を殺すだけでもアホほど時間がかかった。

 『ゾメガ・オルゴレアム』や『ミシャンド/ラ』や『平熱マン』という、
 『ドナの視点』で言えば『ありえないほどの高み』にいる超越者たちですら、
 かすり傷しか負わすことができない異常なバケモノ。

 『絶対に無理だ』と誰もが思った。
 誰もが、当たり前のように絶望した。

『世界が終わっていく……奪われていく……私が守ってきたものが壊されていく……私の大事なものが……すべて……喰いつくされていく……イヤだ……壊さないで……お願いだから……やめて……』

 そんな『闇をも飲み込む地獄』の底で、

『誰か……』

 狂っていく絶望の中で、

『……助けて……』

 ――たった一人、
 ドナの慟哭に応えてくれたのは、



『あれ? ドナ、お前、もしかして泣いてる? うわ、マジ? 俺、お前が泣いてる所とか初めて見た。すっげぇレアじゃね? てか、お前も泣いたりとかするんだな。ははは……いやぁ、しかし、ドナよ……お前、涙が壊滅的に似合わないな。お前は、クールにキセルをふかしている姿が一番似合う。ていうか、それ以外は似合わん』



 この上なく尊き命の王センエース。
 すべての『弱い命』をその身に背負ってくれた神。
 この世でたった一人、
 『その他全員』の代わりに前を向いてくれた理想のヒーロー。


『セン様……なぜ、あなたは……立ち向かえるのですか……そんな……誰よりも、ボロボロになって……誰よりも苦しんで……一時も休むことなく……血反吐をはき散らしながら……こんな、終わるしかないと分かっている絶望を前に……もう、全員が死ぬしかないって地獄を前に……どうして……なんで……意味がわからない……理解できない……もしかして、あなたは【現状がもう詰んでいる】という事すらわからないほどバカなのですか? 私はあなたを買いかぶりすぎていたのですか?』


 立ち向かえるわけがない地獄。
 覆せるわけがない絶望。
 そんなことは、神もわかっているはずだった。
 わからないはずがなかった。
 なのに――

『ようやく気付いてくれたか。そのとおり。お前らは、常に俺を買いかぶりすぎている。お前らは、頻繁に俺を持ち上げるが、俺なんて、実際のところは、大したヤツじゃねぇ。ただの、ヤバみが深めのサイコパス。常人には理解不能の変態でしかない』

 センエースは、最後の最後の最後まで『狂人(英雄)』であろうとした。
 どんな時でも前を見続ける『ド変態(王)』であり続けようとした。
 『絶望に対して酷く鈍感なピエロ』の仮面をかぶり続けて、



『もう一歩、ぶっちゃけた話をするなら、俺にはお前らと違って保険があるからな。死んでも別の世界に転生するだけ。楽なもんさ。だから、死にビビることなく闘える。俺なんて、それだけのもんさ』




 神はいつも、雄大だった。
 超然としていた。
 飄々としていた。

 どんな絶望を前にしても、
 『俺にとっては大した問題じゃない』と笑ってみせた。

 ――みんな、わかっていた。
 ――それが演技だってこと。


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