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82話 死夜の薔薇。

 82話 死夜の薔薇。

「高み……あなたは『達していない』といいながら『見せよう』とも言う……これは、なんの禅問答だ……あなたは……いったい、何者なんだ……」


 ドナと出会ったことで、ゴミスの中の常識がどんどん崩れていく。
 本物の神様でも見つけたような目。
 ゴミスの中で、ドナがどんどん大きくなっていく。

 ――ドナは、
 タメにタメた魔力とオーラを解放させて、
 胸の前で、両手を交差しつつ、


「――死夜の薔薇――」


 それは、ドナが誇る最強のグリムアーツ。

 浮遊する五本の闇手が、黒く輝き、カっと光った。
 広がっていく、美しい地獄。
 闇色の花びらが、艶やかに、幻想的に舞い散る。


「……神……」


 思わず、声をもらしてしまったゴミス。
 あまりに美しすぎた。
 ゴミスの視界は、
 『無限の死』で埋め尽くされる。

 黒い後光を背負った高純度の闇が、
 キラキラとまたたいて、途方もない死を飾る。
 甘く、切ない、美貌の死。

 ――『死夜の薔薇』は、簡単に言うと、
 『召喚可能な闇手の数』を『20倍』にするという、
 きわめて特殊な、魔力とオーラの運用法。
 『魔法体術を極める』というタイプの異型グリムアーツ。

 ※ グリムアーツは、魔力を使わないタイプがほとんどだが、
   死夜の薔薇のように、魔法の運用を極めるタイプだと、
   当然、大きな魔力を必要とする。

 現時点で、すでに100本の召喚に成功しているが、
 最終的な目標は『10000本』の闇手を召喚すること。

 ドナは、厳かに、

「リラ……リラ……」

 心を込めて、

「――ゼノリカ――」

 神を賛美する。
 すると、
 100本の闇手が、さらなる深き後光を放ち、

 ――ギギィイッッ!

 と、唸りを上げながら、
 亜空間を豪速で駆け回りつつ、


「がっはぁぁあああああああああああああああああっっっ!!!」


 ゴミスの全てを殺しつくそうと、
 次元を裂きながら、獰猛に襲い掛かった。

 黒死刀の乱舞。
 黒い刃が煌めいて弾ける。

 一撃だけでも充分に即死級の一手が、
 無限を彷彿とさせるほど、
 美しく、満開に咲き誇る。

 これだけの『膨大な死』に晒されて、
 しかし、ゴミスは死ななかった。

 終わらない闇色の命。
 その中で、
 ゴミスは、

「……光……」

 光を、見つけた。
 眩しくて暖かい光。
 心にしみこんでいく。
 魂の重荷が減っていく。
 ――『自由』の意味が理解できた気がした。


「……なんという……」


 理解できない感情に支配されるゴミス。
 終わらない死の中で、ゴミスは『神の光』を垣間見た。


 ――ドナが、『死夜の薔薇』に込めたのは『かつての想い』。


 古参であるドナは、聖典で知識を補完したのではなく、
 『その目と心』で、神の偉業を魂に刻んできた。

 絶対の超魔王を超えた神。
 無限の戦争を終わらせた神。
 そして、
 たった一人で『1000×10000』の地獄に立ち向かった神。


「真の高みは……言葉になどできるはずもない」


 ドナの中で、高次の暖かさが膨れ上がる。


「あの光に触れていない者に……理解など、出来うるはずが無い」


 ドナの全てが『光』に包まれる。

 満たされていく。
 思い出すだけで。
 想いを馳せるだけで。

 ドナの全てに、甘い熱がともる。


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