センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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74話 勝てない。何をしようと。

 74話 勝てない。何をしようと。

(……勝てない……状況が悪すぎる……というか、彼我のスペックが違いすぎる……)

 完全なる絶望の底に沈むゴミス。
 すでにヘシ折れてしまったゴミスを見て、
 ドナは、やれやれといった顔で、

「うむ……流石に、真・武装闘気5だけでは。ハンデが足りなかったか」

 そうつぶやくと、
 自身のアイテムボックスから、
 凶悪な性能の剣を取り出して、

「受け取れ。使う許可を与える」

 浮遊させた状態で、ゴミスの目の前に移動させる。

 目の前で浮遊する剣。
 一目で、とんでもない性能の剣だと理解できた。
 だが、ソレを見ても、ゴミスは、テンションを上げることなどなく、
 死んだ魚の目で、

「……う、腕がねぇから、使えねぇよ……」

 消え入りそうな声でそう言った。
 それは、反論というよりは、ただの泣き言だった。
 完全に、命を諦めてしまっている者の声。
 ドナによって心を折られた者が見せるデフォルメアイズ。

 ――だが、ドナは手を休めない。

「何を言っている。右腕は戻してやっただろう」

「は? ぇ……ええっ……ぃ、いつのまに?!」

 気づけば、右腕だけ、すっかりもとに戻っていた。
 もちろん『そんな感覚』はいっさいなかった。
 いつ再生されたのか、どのように再生させたのか、
 何もかも、一から十までさっぱりわからない。

(……なんなんだよ……この女……ほんとに……もう……)

 右腕は再生した。
 つまり、まだ戦える。
 しかし、心はより潰(つい)えた。

 じんわりとした粘滞性の恐怖で包まれる。
 重濁性を有する忌避感。
 ゴミスの目には、目の前にいる女が、
 どんどん気持ちの悪い異形に見えてくる。

 ――これが、ドナの拷問流儀。
 単純な殴る蹴るで終わらせたりしない。
 あらゆる手を使い、相手の心を的確に折りにいく。

 拷問の時だけではなく、
 ガチ戦闘の時も、
 頻繁に、この手の『奇術戦法』をとる。

 相手のスキをつき、盗み、騙し、恐怖させ、
 強制的に『有利』をもぎとっていく狡猾な闇人形スタイル。

 正々堂々の対義語。
 ドナに対し『脳筋スタイル』で挑むと、
 一瞬でからめとられて、何もできなくなる。

 九華十傑の第十席・序列一位である『アクバート・ニジック・J・ヤクー』は、
 ドナよりも高い戦闘技術と存在値を持つが、
 『何でもあり』の闘いになると、確実にドナが勝つ。

 今の『UV1(百済頭目)』と『長強(楽連筆頭)』も、似たような関係で、基本的に、殴り合いのタイマンなら、長強が勝つが、なんでもありならUV1が勝つ。

 百済の系譜は、深き死に特化した死神の系譜。
 泣く子も黙る極限にして永遠なる畏れの対象。

「……ぐぅ」

 混乱の中でも、
 ゴミスは自分を見失わず、
 目の前に差し出された剣を右手でつかみ、

(落ち着け……もう状況は分かった……この女には、絶対に勝てん……実力が違いすぎる……この女は……厄介さなら、アモンよりもはるかに上……)

 色々あって、結果、ゴミスは、自分の状況を理解した。

(ゼノリカというのが、具体的にどういう組織なのか、まだ、いまいちよくわからんが……とにかく、そこらのしょっぱい新興宗教ではない……)

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