センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
38話 ソウルゲートを経た平熱マン。
38話 ソウルゲートを経た平熱マン。
そして、中に入ると、
平は、そのままの流れで、すぐに外に出てきた。
と同時に、世界から退場するソウルゲート。
センの視点では、
壊れた『どこでもドア』をくぐっただけにしか見えなかった。
――『ソウルゲート』では、存在値を上げることができない。
戦闘力(スキルの技術も含まれる)しか上がらない訓練所。
だから、『純粋な見た目』に変化は見られない。
扉をくぐる前の平熱マンと、
扉をくぐった後の平熱マンに、
『見た目の違い』というものはほとんどない。
しかし、
センの目には『その向こう側――本質』が見えている。
だから、
「……随分と上げてきたな。オーラの質とツラ構えが違う」
平熱マンの『ステータス上の数値』に変化はない。
だが、
戦闘力に関しては、別人のように進化していた。
「……この上なく尊き我が師よ……」
「なんだ?」
「一つお聞きしても、よろしいでしょうか」
「好きに聞け。俺はお前にモノを教えるのがメイン職だ。『神』としての仕事は副業にすぎない」
「……恐悦至極……もったいなくも、師の『暖かなお言葉』を賜り、ボクの全てが『この上ない喜び』に満ちておりまする」
「いちいち褒めんでいいと言っとろぉが。お前は本当に人の話を聞かんやっちゃな……」
『センに触れた者』は、たいがい、
『センの尊さを称えたくて仕方がない病』にかかってしまう。
『アダムに散々注意したものの結局治らなかった』のと同じで、
平も、何度注意しても、スキあらば、センをほめたたえてくる。
――センは、鬱陶しそうにため息を挟んでから、
「で? 何が聞きたい?」
「師は……あのソウルゲートで本当に『200億年』も……耐えることができたのですか?」
センが『P型センエース1号』と会話していた際、
P1が『ソウルゲートで200億年うんぬん』と言っていたのを、平は覚えている。
平が、実際に体験してみて思ったことは次の通り。
――『100万年』でも精神的には、かなりギリギリだった。
――あれ以上は厳しい。
――おそらく、100万年前後が生命の限界点だろう。
平は、本当に、ギリギリのギリギリで、ソウルゲートから帰還した。
ハッキリ言って、何度か精神が崩壊しかけた。
自分以外誰もいない場所で、ただ一人、孤独に黙々延々(もくもくえんえん)と修行をし続ける――その狂気は、はかりしれない。
最初の1年、2年なら、元気溌剌で修行できた。
だが、5年も経った頃には心が擦れてきた。
10年たったころには『現実味』が消えていた。
100年が経ったころ、平は自殺を考え出した。
時間をナメてはいけない。
数字をナメてはいけない。
『完全なる孤独』の『底』で『ただ積み重ねるだけの一秒』を、
――ナメてはいけない。
修行がつらいとか、そういう話じゃない。
すべてが悪夢になっていくのだ。
黒い白昼夢。
心がすりつぶされていく。
『命』は『一つ』では、生きていけないと分かった。
圧倒的な孤独に打ちのめされ、
何度も自殺を考えた。
現実が乖離して、
幾度となく自分を見失った。
苦しくて、苦しくて、仕方なかった。
――師を失いたくない。
――そのための力が欲しい。
その強い想いがあったから、
どうにか、ギリギリ、
本当にギリギリ、耐えきることができた。
――平は思う。
もちろん師には負けるが、
しかし、自分も『精神力』には、それなりの自信がある。
そんな自分でも100万年が限界だった。
耐えきれた自分を、本気で褒めてあげたいと平は思う。
あの孤独地獄で100万年も耐えられる者はそうそういない。
本気で思う。
だからこそ、強く思う。
200億なんて、そんな数字は絶対に不可能だ。
「正直……200億年という数字は……ボクだと、想像することさえできません……師は……本当に、そのような……」
正直、平は『何かの間違いだろう』と思っている。
記憶違いか、認識違いか。
あるいは、『200億』というのは『何かの隠語』で、
『実際の数字』とは異なるのではないか。
――と、そんなことを思いながらの質問だった。
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