センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

15話 お前は誰だ?


 15話 お前は誰だ?

「くるしゅうない」

 その一言で、
 脆弱な牢獄は、己が定めの完遂を解し、
 スゥウっと、虚空へ熔けていった。

 パラパラと、チラチラと、粒子となって、
 まるで柔らかな風に吹かれているかのように、
 スゥと、音もなく流れていった。

 粒子の残滓がまたたく中で、
 センエースは、
 『ピーツ』『ドコス』『エーパ』『カルシィ』『パガロ』の『執念』を補足し、

「……ミシャたちに加勢してくれたこと、心から感謝する。お前たちの執念、この俺が受け止めよう」

 そう言って、
 彼らを、自分の『中』へと受け入れた。
 『P型センエース2号』という特異な絶望によって生じた『彼らの死』は、今のセンエースでも『なかったこと』にはできない。
 だが、その死を昇華させる事なら可能。

 希望と、友愛と、誇りと、優しさを、
 センエースは、丸ごと包み込む。
 調和され、一致して、
 そして、すべてがセンエースになっていく。





 ★





 ――粒子の残滓が晴れた時、
 センエースの目の前には、
 P型センキーが立っていた。

 その向こうでは、アダムとシューリの二人が、
 『象(かたち)を失ったミシャ(業)』のことを想いながら、
 ツーっと、涙を流していた。

 そんな彼女たちを見たセンエースは、
 とても、厳かな、
 しかし、とても穏やかな声で、

「安心しろ……」

 凛と響く、英雄の声。
 この上なく尊き神の王は、
 奏でるように、

「ミシャ(業)は、俺の中にも、ミシャ(本体)の中にもいる……これは、感傷の慰めではなく、ただの事実」

 センエースの言葉を受けて、
 アダムとシューリは、
 ……コクっと、小さく頷いた。

 彼女達も、また、
 『全て』を思い出したわけじゃない。
 というより、本当のところは、何も理解できていない。

 ただ、解(わ)かる。
 失ってはいけないもの。
 決して、無くしてはいけないもの。

 センエースと、彼女達の、根源的なコアを支えている原初の歴史。


 ――なんて、謎だらけの余韻に浸っていると、
 独(ひと)り、蚊帳の外にいるP型センキーが、





「……お前は、誰だ?」





 まるで、超一級の舞台。
 役者も脚本家も、全員、幽玄でキ〇ガイ。

 問われた神は、
 ゆっくりと目を閉じ、
 輝く息継ぎを経て、
 パっと目を開き、

「俺は、究極超神の序列一位。神界の深層を統べる暴君にして、運命を調律する神威の桜華。舞い散る閃光センエース」

 この上なく尊い口上。
 頂(いただき)にたどり着いた神の名乗り。

 それを受けて、
 P型センキーは、一度うなずいてから、




「……そして?」




 そう問われた『理想の英雄』は、

 美しい予定調和に身をゆだねて、上品に見栄を切りなおし、
 そのままの『厳かな流れ』を断つことなく、
 果てなく優雅に、




「私は、運命を殺す狂気の具現。永き時空を旅した混沌の狩人。月光の龍神??????」




 ラストに自主規制音の入った『不完全な名乗り』を受けると、
 P型センキーは、

「……はは」

 一度、からっぽの笑みを浮かべてから、

「……かぁぁっくぃい」

 そう言うと、
 そのまま、

「厄介なイヤがらせはもう消えた……昇華されて、満足したってことか……」

 そうつぶやいてから、



「……別にもう意味ねぇ……なのに、許容量以上の運命力を削るべきか否か……いや、もちろん、やるべきじゃない。自粛すべき……わかっている……俺はバカじゃない……」



 数秒悩んでから、

「けど……まあ、でも……」

 アイテムボックスから、一枚の禁止魔カードを取り出し、

「さすがに、このままじゃ、おわれねぇからなぁ。せめて、一発だけでも……」

 そう言ってから、スっと息を吸い、

「禁止魔カード、使用許可要請」


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