センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
10話 リハーサルもバッチリ。
10話 リハーサルもバッチリ。
「おわり、おわり! はい、終了! 世界、おわりました! P型センキーが、世界をペロリといっちゃいました。『世界』ってのは、あいつが『美味しく頂くための豚』にすぎませんでした! めでたし、めでたし! 以上ぉおおおおおお!」
慟哭は、常に筋の通った正論で、
だから、余計に、ハリボテの情動を固執させていく。
この世界は、『頑張らなくていい理由』で溢れている。
この世界では、積み重ねた分だけ苦しくなる。
誇張でも、空言(そらごと)でもなく、
事実、世界は、いつだって、『崩れるのを待つ砂上の楼閣』でしかない。
「俺を信じている連中は全員バカだ! 俺に寄りかかり、俺を利用し、俺に依存するだけのクソばかども! まとめて全員死んでくれ! すぐでいいぞ!」
『自分以外の何か』に当たり散らして自分を守る。
この『ブサイクな弱さ』が、ここちいい。
『逃げていいんだ』って証が、全身を優しく包み込んでくれる。
ドロっと甘い蜜。
体が軽くなった。
なるほど、これは、中毒になる。
理解できた。
センエースは、脆弱(ぜいじゃく)という麻薬の価値を正当に理解する。
「ああ、なんだ……これで良かったんだ……簡単な事だった……こんなにも簡単に、自由になれたんだ……静かな安息……豊かで、優しくて……」
――『イタズラな領域外の牢獄』――
ここは、
センエースという原始概念を殺すためだけに創られた固有世界。
『そのため』に、
『そのためだけ』に、
幾千億(いくせんおく)のアリア・ギアスが積まれた限定空間。
何度も、何度も、何度も、くりかえされた試行錯誤。
おそろしく丁寧に整えられた下準備。
D型を使ったリハーサルもバッチリ。
この空間こそが、対センエースにおいては、完璧最強の特異領域。
『それでも』――と、湧き上がってくるセンエースの胆力を端から殺しつくす。
この世界は、『立ちあがること』を許さない。
どれだけ『心の強い者』でも、『ここ』では『ただのクズ』になる。
たとえ『根性キ〇ガイ集団ゼノリカ』の『天上』に属する者であろうと、
ここに『現状のセンエースと同じ条件』で閉じ込められたら、
絶対の『待ったなし』で、一秒と持たずにへし折れる。
耐えられるはずがない。
耐えられてはいけないのだ。
確定で、間違いなく、誰であろうと、ここに閉じ込められた瞬間、
一言も言葉を発する事なく、魂を持たない屍になるだろう。
――だが、センエースはまだ喚いている。
いまだ、センエースが、ごちゃごちゃと喚いているのは、
まだ、『言い訳』に頼らなければ『自分を折る事』ができそうにないから。
センエースは、今、必死になって、
自分に対し『はやく折れろ』と言い聞かせている、
つまりは、
まだ折れていないのだ。
――センエースは、
まだ闘っている――
「ああ……自由だ……これでいい……この安息以外、何もいらない……スッキリとした……心も頭も……すべて……楽で……自由で……だから……」
奥歯が軋む音がした。
血走った目は、とても『自由になった男』のソレとは思えない。
安寧や自由なんて言葉を使ってはいけない、
ひどく歪んだ、狂気の表情。
「俺はもう闘わない……絶対に……絶対にだ……」
全力で、『折れろ』と自分に言い聞かせる。
必死になって、屈服させようとしている。
「俺は……もう降りた……降りたんだ……すでに……とっくに……もう終わっているんだ……だから……」
たくさんの言葉を使った。
山ほどの言葉を使った。
センエースは、『センエースを折るため』に、必死になって、
「折れろ……いい加減……なんで……」
けれど、
「……どうして……」
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