センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
2話 ミシャンド/ラ(業)。
2話 ミシャンド/ラ(業)。
センエースの携帯ドラゴンは、
グワっと天を仰ぎ、
「きゅぃいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
と、まるで、何かを呼び寄せているかのように、大声で鳴いた。
「や、やかましい……なんだ……?」
「きゅぃいいいいいいいいい!!!!!!」
全力で、
必死に、
決死の覚悟で、
センエースの携帯ドラゴンは、認知の領域外を砕き割らんばかりの勢いで鳴き喚く。
「……うるさいと言っている」
P型センキーは、イラっとした顔でそう言うと、
そのまま、ガバァァと大きく口を開いて、
やかましく叫んでいる『センエースの携帯ドラゴン』をバクっと丸のみした。
ゴクンと嚥下してから、
「ふぅ……まったく……最後の最後まで、うっとうしいゴミが……まあ、しかし、これで、完全に終了――」
そうつぶやいた、
その直後だった。
空間に、ビシリと、亀裂が入って、
その奥から、
「……まだ、終わりじゃない……」
――『彼女』は現れた。
禍々しいオーラを放つ、小柄な邪神。
その死紅に濡れた邪眼は、まるで常闇を飲み込んでいるかのように鋭いが、
しかし、纏うドレスは、その小柄な体形にマッチしており、
乙女チックかつ鮮やかで華やか。
体に絡みつく、邪悪なアポイタカラの蛇。
頭部を飾る、イバラの冠が二輪。
なんとも歪で妙なコントラスト。
※ 『彼女』が纏うドレスの名は『ナタリー』。
ミシャのレオンと対をなす、究極超神器(もちろん、センエース作)。
ちなみに、『彼女』がセンエースによって初めて召喚されたときは、
彼女の邪悪さにふさわしい漆黒の衣をまとっていた。
――『彼女』の威容を目の当たりにしたP型センキーは、
少しだけ、眉間にしわをよせて、
「……ミシャンド/ラ……」
彼女の名前を口にした。
しかし、すぐに、
「いや、違うな……本体ではない……お前は……そうか……」
納得したように、一度頷いてから、
「センエースが背負った……『ミシャンド/ラの業』だな。なるほど……センエースは、散り際に、出来うる全てを『遺(のこ)していった』という事か……」
正しい答えに辿り着いたP型センキーに対し、
『ミシャ(業)』は、
スっと、P型センキーの胸を指さしながら、
「そいつは……」
本体の、愛らしい声とはまったく性質の異なる、
おどろおどろしい声で、
「あたしの男だ……」
狂気が滲む、闇色の声のまま、
「……かえしてもらう……」
その宣言を受けたP型センキーは、
「……はっ……お前に何ができる」
まっすぐな挑発を受けて、
ミシャ(業)は、
堂々と、
「最愛の男を、取り戻せる」
「ははっ。ハシャぐなよ、ミシャンド/ラ(業)。……ミシャンド/ラの『力の根源』であるお前は、『絞りカスでしかない本体のミシャンド/ラ』よりも遥かに『大きい』が……『ミシャンド/ラより遥かに大きい』という程度のカスが、今の俺をどうにか出来るワケないだろう。俺はP型センキー。『舞い散る閃光』と『彷徨う冒涜』が調和した姿。すなわち、究極の闇。お前ごときが――」
と、そこで、
ミシャ(業)は、右手を、アイテムボックスに突っ込んで、
一枚の魔カードをとりだした。
その魔カードから発せられているオーラを感じ取ったP型センキーは、
一瞬で、キっと、表情を締めて、
「っっっ?! て、てめぇ……どうして、それを……っ」
「不愉快極まりない『禁忌の邪悪さ』が、自分だけの特権だと、いつから錯覚していた?」
「……っ」
ミシャ(業)が、歯噛みするP型センキーをにらみつけたまま、
「禁止魔カード、使用許可要請」
そう言うと、
ほとんど、かぶせるように、
――許可する――
声が聞こえた。
ミシャ(業)は、
その流れのまま、
「――かごめかごめ――」
つぶやきながら、
禁止魔カードを破り捨てる。
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