センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
最終回 ゲームオーバー。
最終回 ゲームオーバー。
「もちろん、お前の視点で言えば、大事な女を奪われた形になるから、拍手喝采とはいかないだろうが……ここは、一つ、そういう個人的な視点を捨てて、まっすぐに、俺を見つめてみろ。どうだ? ……震えないか? 恐怖からではなく、この、いと高き尊さにあてられて」
などと、P型センキーがごちゃごちゃ言っている間、
――その間も、センエースは一歩も動けずに、ただ固まっていた。
二人の愛する女神を傷つけられたことで、心の中は、暴風のように荒れていたが、
しかし、どうあがいても、この謎の呪縛を外すことはできなかった。
この呪縛……センは、決して、黙って受け入れているわけではない。
センエースは『自分にできる、ありとあらゆる解呪』を試したが、
しかし、どうやら、『禁止魔カードの執行』によって組み立てられた『この呪縛』は、通常の呪縛とは、質があまりにも違いすぎるようで、
センエースの抵抗をいっさい受け付けなかった。
「ふふ……さすがに、今は、激昂しすぎて、この美しさを素直に受け入れる事など不可能か……」
やわらかく微笑んでから、
P型センキーは、
ゆっくりと歩を進め、
「今の俺の存在値は……いったい、どのくらいだろうな。17兆から上は、どの手段をもってしても、デジタルには測れなくなるから、正式なところは分からないが……100兆は……流石に超えていないか……もしかしたら、超えているかもしれないが。ふふ、わからんな。ま、ここまできたら、数字なんざ、どうでもいい。今、ここにある事実は一つ。――『本当の頂点』に、今の俺は立っている。それだけがすべて」
センの目と鼻の先までくると、
そこでピタっと歩を止めて、
センの目を見ながら、
「さて、センエース。お前を縛る鎖はまだ千切れそうにない訳だが……どうする? このまま、俺に殺されるか?」
センは必死に抵抗した。
抵抗して、抵抗して、抵抗して、
けれど、
センは動けない。
ただ全力で、睨みつけることしかできない。
「自分よりも強い相手を前にして、その上、一歩も動けないというのに、目の奥に灯る光には、わずかな揺らぎすらない。お前の精神力には、心底から感嘆する」
P型センキーは、そうつぶやいてから、
「ソンキーの力を借りる事もできない。念願だったゼンとの融合も不可能。ゼノリカは、ここには入ってこられない。現状のお前に救いはない。お前は、もう、死ぬしかない。その事実を、お前はキチンと認識している。お前が、そうして『いつまでも前を向き続けていられる』のは、決して『愚か』だからではない。強いからだ。本当に強いから。お前より心が強い者は、この世に存在しない。断言してやる。俺の御墨付きだ。お前は強い。お前は最強だ」
とうとうと、
本気のメッセージを並べてから、
「しかし、死ぬ。俺には勝てない」
最後に、
「ゲームオーバーだ、センエース」
そう言って、
P型センキーは、グワっと大きく口を広げて、
迷いなく、
――バクッッッ
と、センエースを丸のみにしてしまった。
わずかな咀嚼ののち、
ゴクリと飲み込まれ、
そして、
だから、
しかして、
必然的に、
P型センキーは、
「……終わった……何もかも……」
天を仰ぎ、
「3号もD型も必要なかった……やはり、不可能だったんだ……いや、ここまでこられただけでも、褒めてやるべきだろう……よくやったよ、ほんとうに。喝采しよう。お前は素晴らしかった」
ぼそぼそと、
「ずいぶんと長い実験だったが、終わってみれば、あっけない最後だったな……いつもと同じだ……最後は、いつも空虚で、はかなくて……」
P型センキーの言葉通り、
本当にあっけない最期だった。
しかし、リアルなんて、こんなもの。
ゲームオーバー以外は許されていない地獄。
それが『現実』という最強の狂気。
というわけで、みなさん、さようなら。
センエースは負けてしまいました。
けど、こっちの方がリアルでしょ?
主役だから勝つわけじゃないってこと。
これが現実(リアル)。
よって、これも、いわゆる一つの、
めでたし、めでたし!!
コメント
ノベルバユーザー341225
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