センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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7話 センエースの前に立つ資格がない。


 7話 センエースの前に立つ資格がない。

 ドコスの死を目の当たりにして、
 まるで、リモコンのスイッチでも押されたみたいに、
 カルシィとエーパの脳内で、
 ドコスとの思い出が走馬灯のように流れていった。

 寂寞(せきばく)とか、
 沈鬱(ちんうつ)とか、
 憂患(ゆうかん)とか、
 真正面の虚無感とか、
 純粋な悲痛とか、
 色々なものが、
 溢れて、弾けて……

 心が凍結したみたいに、
 全身が冷たくなって、

 ただ、ただ、涙がこぼれた。
 理性と感情がないまぜになって、
 彼女達の『中』がいっぱいいっぱいになって……



「その悲しみごと殺してやるさ」



 言って、
 ボーレは、先ほどと同じように、
 いっさいの迷いもためらいもなく、
 エーパの首から上を、無残に吹き飛ばした。

 痛みを感じる余地すらない瞬殺。

 残されたカルシィは、

「……ぁ……」

 喉が詰まっていた。
 こぼれる涙と、
 震える体。

 脳内がグチャグチャになっていた。
 現状がまったく理解できない。

「……なんで……」

 なんの意味もない問いかけ。
 もし、仮に、答えを得たところで、本当に無意味な問い。

 ドコスとエーパは死んだ。
 その現実は変わらない。
 そして、
 直後、

「なんで、か。きわめて愚かな問いだな」

 カルシィの体が、グラリと倒れた。
 あまりに一瞬の出来事すぎて、気付かなかったが、
 首から上がなくなっていた。

 ドサリと、肉が地に落ちる音だけが静かに響いた。

 転がっている三つの屍。
 そんなゴミに、一瞥をくれることもなく、
 ボーレは、ピーツに、

「何か言いたいことはあるか?」

 そう問いかけながら、掴んでいる手を離した。

「ぶはっ!」

 解放され、思いっきり空気を吸い込んでから、
 ピーツは、

「てめぇえ! ふざけんなぁ、ごらぁあ!!」

 特に魔力もオーラも込められていない、ただ力一杯握っただけの拳を、ボーレの顔面に向けて叩きこむ。

 バキッッっと、重たい音がして、
 ピーツの手の骨が折れた。
 前腕の骨にもヒビが入っている。
 神経が悲鳴をあげた。

 激烈な痛みだったが、
 溢れ出るホルモンのせいか、
 余裕で我慢できてしまう。

 涙は流れたが、痛みにへたれこむことはない。


「何がしたいんだよ! なんで、あの三人を殺した! 意味がわからない!」

「邪魔だから、鬱陶しいから、だから、掃除した。それ以外の理由はない」

「……ふざけ……っざっけんあぁああ!」

 二度、三度と、
 ピーツは、ボーレに殴りかかった。

 もちろん、ボーレにダメージなど通らない。
 ピーツの行動は、ただただ、自身の骨をいじめているだけ。

 携帯ドラゴンを失ったピーツは、本当にただの落ちこぼれ。
 魔法のセンスゼロで、現状では剣もろくに扱えない、
 本当の本当に、なんの力も持たないただのガキ。

「……絶望を前にして……知人の死を前にして……しかし、一向に『開く気配』すらなし……だめだな……本当に貴様は使い物にならない。センエースの前に立つ資格がない」

「何言ってんだよ、てめぇ! さっきから、ほんと、なにひとつわけわかんねぇんだよ! てめぇ、何がしてぇんだよ!!」



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