センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

41話 いつだって、主役は遅れて現れる。

 41話 いつだって、主役は遅れて現れる。

 ヘナリと歪んだウラスケを、
 ――ネオバグは、優しく抱きしめる。


 柔らかいと感じるくらい温かかった。
 ヌルリと、軟質にすべりこむ。
 『収まる場所』を与えられると、人は弱い。

「……きっと、みんな、そういうもの……」

 『スキマに入られた』と気付ける余裕などなかった。
 ウラスケは、ネオバグの腕の中で静かに目を閉じた。

 明らかな失態――だが、どうしても、回避はできなかった。
 薄日のように、丁寧な侵略。

 だから、ついに、ウラスケは、ボソっと、

「くだらない殻を放棄して、グチャグチャに混ざり合って、ただの一つになれば……漠然とした不安は……なくなるかもな……」

 そうつぶやいてしまった。
 『認めて』しまった。
 だから、
 グヌリと、淫靡な音と共に、ウラスケは、ネオバグの中へと溶けていく。

 かくして、あっさりと、
 ウラスケの核は、
 ネオバグに奪われた。


 華麗にウラスケを奪い取ったネオバグは、

「あはっ」

 相好(そうこう)が崩れるほどの、

「あははははははっ!!」

 口が裂けるほどの笑み。
 笑壺(えつぼ)に入り止まらない。
 体を揺らし哄笑(こうしょう)。

「きた! きたきたぁああ! ウソでしょ! ここまで?! すごい! 傑出している! なに、このコアオーラ! 豊潤! 圧巻! 器の奥から、噴水みたいに沸きあがるこの厚み!!」

 ネオバグの中で、
 ウラスケが浸透していくにつれ、
 ネオバグの存在値が、どんどん膨れ上がっていく。

 想定を遥かに超えていた。
 激甚な快楽。
 煩わしい縛りが消えていくのが分かる。

 純増していく。
 空虚な魂が、ウラスケを得たことで、気炎をあげた。


「完成した……これが、本当の私……」


 愉悦に浸っていると、
 ビキリと、奇怪な音がして、
 ネオバグは神経を研ぎ澄ました。

 ザワリと胸が騒いだ。

 九時の方向。
 視線を送る。

 そこには、亀裂ができていた。
 ザクリと世界を裂いた傷。

 ――その奥から、





「また、ずいぶんとおかしなことになっとんなぁ……」





 『彼』が現れた。
 次元違いのオーラを放っているドラゴンスーツ。
 洒脱で泰然とした少年。
 どこか、ウラスケに似ていた。

 彼を見て、ネオバグはポツリと、

「……タナカトウシ……」

 認識と結合。
 あまりにもスムーズな解答を受けて、
 トウシがボソっと、

「とりこんだウラスケの記憶から情報を引っ張ってきたってとこか? なかなか器用なまねをするやないか。それとも、あのバカタレは、根っからお前と融合しとるんか? あいつは、そこまでのアホではなかったはずやけど」

「……まさか、あなたが神話狩りの『聖主』? レコードのデータから鑑みるに、あなたが『そんな地位に収まる』のは、ありえないと思うのだけれど……」

「自分でもありえへんと思うとるよ」

 そう前を置いてから、トウシは、全身に力を込めた。
 じっくりと、蒸らすように、オーラを上昇させる。
 グググと、スロースターターに存在値を上げつつ、

「最初にちゃんと言うとくけど、自分から言い出したわけやないからな。集団の頭を張っとるんも、訳の分からん党首名をつけられたんも、全部、なりゆきのイヤイヤ。現状のワシは、周囲の連中から、高度な嫌がらせ・レベルの高いイジメを受け取るだけ……そこんところ、勘違いせんように」


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