センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
39話 形而上の幸福論。
39話 形而上の幸福論。
(マズいな……ここまで強いとは……想像しとったよりも、はるかに上……昨日の連中の比やない……今のぼくでは、どうあがいても勝てん……)
必死になって頭をまわす。
(メルクリウスをもっと劇的に強化する方法を探さな、こいつをどうにかする事は出来ん……となれば、今、ここで、ぼくが取るべき最善手は……)
コンマの中で、ウラスケは必死に考えて、
「一つ、聞かせてほしい。お前の目的はなんや?」
「最終進化を果たすこと」
「……最終進化ねぇ……で、それになったら、どうなるん?」
「究極の個が完成する」
「……どうやら、質問の意図が伝わってへんようやな……」
辟易した顔でそうつぶやいてから、
ウラスケは、言葉を整理し、
「ぼくが聞きたいんは、お前らの中におる二人を、最終的にどうするつもりなんかということや」
「最終的には、あなたも含め、全てが一つになる。私の中で、命は、大いなる一つとなって昇華される。全てが一になって、そして、最後には……何よりも美しいゼロになるの」
「……全てが一つになるとか……美しいゼロとか……概念的すぎる……具体的に、どういう事なんか教えてくれや」
「私にも、ハッキリとは分からない。ただ、胸の中にある、漠然とした欲求を、ムリヤリ言葉にするとすれば、そういう表現になるというだけ。実際のところは、全てが一つになった時にしか分からない」
「なんや、それ……わけわからへん。そんな曖昧なことでええんか」
「なら、あなたは答えられるの?」
「……はぁあ?」
「産まれてきた理由は? 生きている理由は? 最終的に、どうなりたいの? その命をどうしたくて、あなたは産まれ、生きているの?」
「……」
「どう? こたえられる?」
「いや、あの、ぼくには、そもそも、こうしたいってもんがない。ただ、念のために生きとるだけ。だから、答えられん。けど、お前には、全部を一にするとか、美しいゼロとか、わけわからんにしても、一応は目標があるんやろ? それやのに、一番大事なところが曖昧なままでええんかという部分が論点で――」
そこで、ネオバグは、割って入り、
「あなたは、幸福になりたいって思う?」
「……まあ、それなりには」
「あなたにとっての幸福を明確に定義・説明できる?」
「……なんや、もしかして、『それと同じ』やって言いたいんか? 『お前の中にある欲求』は『ぼくにとっての幸福という概念』と似たようなものやって?」
「私はそう解釈しているわ」
そこで、ウラスケは頭を働かせた。
自分自身の意識深層へと潜っていく。
答えを求めてみる。
文章化された解答。
それは、えてして、『定形化した自己矛盾』に陥る罠となる。
「ぼくにとっての幸福は……いたって普通に……正常な家族の形成で……だから、ぇっと……」
これまでは、在る程度『明確な将来の目標』があるつもりでいた。
その達成が幸福であるはずだと認識していた。
しかし、キチンとした言葉にしてみると、
なんだか、あやふやであるという事に気付く。
『目標の達成が幸福であると認識したかっただけ』だと気付く。
いや、いま気づいたなんて嘘だ。
本当は知っていた。
ただ、目をそむけていただけ。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
112
-
-
769
-
-
969
-
-
2813
-
-
239
-
-
93
-
-
361
-
-
444
-
-
1265
コメント