センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
34話 死ねばいいのに。
34話 死ねばいいのに。
「なんで、あの女だけ……あんなにめぐまれているの? ゆるせない……こんな理不尽……こんな不条理……」
鈍器のようなネガティブにボコられて、どんどん、パっと見の印象が悪くなるアスカの表情。
心の奥から、黒い何かが沸きあがってくる。
核分裂のように、膨らみ続ける膨大な嫉妬心。
とまらない。
頭の中が、どんどん、ジットリとした重たい熱に支配されていく。
どんよりと、どこまでも黒く、邪悪な湿気を帯びて、
――彼女は気付かなかったが、
この時、
胸に刻まれた『黒いキズ』がわずかに光った。
「……きらい……きらい……」
握った拳。
少し長いツメが掌を刺す。
ジワリと滲む血。
赤に、純度の高い漆黒が混じった、鈍い色――
鏡にうつるアスカの目は黒く充血しており、
歯がむき出しになっていた。
出っ歯と言えるほどではないが、わずかに、前歯の位置が悪い。
その歯並びも、彼女のオーラを神秘化させている『絶妙なパーツ』の一つなのだが、彼女の視点ではそうじゃない。
ただの、整っていない醜い歯でしかない。
――高瀬ナナノはそうじゃない。
彼女の歯は、整っていて真っ白。
笑顔を抜群に際立たせる宝石のよう。
繭村アスカと違い、
高瀬ナナノは美しい。
「……死ねばいいのに……」
その声音には、本気の熱量がこめられていた。
ガチンコの本音。
特に珍しくない、女の嫉妬。
そこから産まれる、本格派の殺意。
『それ』を――アスカの中のネオバグは、目ざとく嗅ぎつける。
『――了解。その黒き願い、確かに承った』
彼女の中で、ネオバグが笑う。
邪悪で漆黒の微笑み。
……プツンと、
アスカの意識は、そこで途絶えた。
黒いキズが、
アスカを飲み込んでいく。
★
彼女が奪われたと同時、
ウラスケは、妙な気配・異変に気付いた。
わずかな波動。
小さな歪み。
ウラスケは、即座に、恥も外聞もなく、女子トイレに突入した。
しかし、そこにアスカの姿はなく、
「ちっ」
ウラスケは、すぐさま、メルクリウスを呼びだして、
「トランスフォーム・モード・ネメシスコード」
変身すると同時、
不可視化状態になって、周囲の捜索を始めた。
★
――一方、その頃、
アスカは、迷いなく、一直線に、空を駆け、自分のクラスに突撃していた。
狙いはただ一人。
高瀬ナナノ。
繭村アスカの敵。
「見つけたっ」
ネオバグ・フィールドを展開しているので、黒いオーラに包まれている彼女の異変に誰も気づかない。
「……殺してやる」
ギラリと、猛禽類のような鋭い視線でナナノをとらえると、
アスカは、右手に力を込めた。
黒いエネルギーがギニギニと音を立てて固形化していく。
鋭い黒刃となった右手を振り上げて、
ナナノに切りかかろうとした、
その時、
「――やっぱ、あんたもそうだったんだ」
ナナノの右手に、ナナノの『奥』から溢れでた黒いオーラが集結し、
アスカの黒刃とそっくりの刃になった。
「――っ?!」
ギィインッッ!!
と、耳障りな音が響いた。
黒刃と黒刃がぶつかりあう音。
「そんな気はしてた……確証はなかったけど、たぶん、そうなんだろうなって」
アスカの黒刃をはじき返しながら、ナナノは、冷静にそうつぶやく。
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コメント
迅生
まさかのネオバグどうしの戦い( ・∇・)