センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
31話 挑発と牽制。
31話 挑発と牽制。
「ちゃんと、答えなさい!」
「……落ち着け。ちょっと離れろ」
異常に近かった距離を清算し、
最低限のパーソナルスペースを確保すると、
場を整えるように、一呼吸を入れてから、
「……お前がここにおることは、偶然。OK。それは理解した。お前の言い分は飲み込んだ。というわけで、いったん、ぼくの話に耳を貸そうか。あー、ごほん。まず……そもそもの話、なんで、ぼくの事情を高瀬に言わなアカンねん、と、ぼくなんかは、前提的にそう思ったりするわけで――」
落ち着いて話をつけようとしているウラスケ。
しかし、興奮しているナナノは、
ウラスケと穏やかな会話をする気などないようで、
「昨日、いろいろ教えてあげたでしょ!」
強い目と強い口調でそう叫んだ。
ウラスケは、軽く頭を抱えて、ため息交じりに、
「昨日、色々と教えたんは、どちらかといえば、ボクの方で、そっちからの情報は非常に少なかったと記憶して――」
「とにかく!! 事情はキッチリと――」
と、そこで、
それまで静かだったアスカが、
「ナナノ」
と、よく通る声で名前を言ってから、
「ナナノには関係のないことでしょ?」
その、まるで『歴戦の剣豪が得意の居合切りでも披露した』かのような、バッサリとした発言を受けて、
――ナナノの顔から赤みが消えた。
興奮状態が一周して、
『女の深部』がヌルリと顔を出す。
ヒステリーが限界値を超えた時、
女は人間(ヒト)から修羅へと変わる。
スっと、白く、冷たく、
凍えるような声で、
「……随分と挑発的ね、アスカ」
「挑発? 意味が分からないわ」
ビリビリと、互いの視線をぶつけあう。
高まった感情は刀。
ギラリと怪しく輝いて、空気を地獄色に染める。
この地獄の中心にいるウラスケは、
額にうかぶ冷や汗をぬぐいながら、
「いやいや、お前ら、なんでキレてんねん……お前らの間で何があったんや……いや、理由とかどうでもええ。この空気、耐えられへんから、ちょっと、お互いに、その目、やめぇ。今のお前ら、マジでやばいで。名のあるシリアルキラーでも裸足で逃げ出すんちゃうか? ほんまに勘弁してくれや。……はい、そこ、拳を握るんはヤメようか。いやいや、近づくな、近づくな。やめぇ、て! はい、やめ! ぼくの『女に対する幻想』をブチ殺すのはそこまでや!」
必死になって、二人の間に入るウラスケの眼前で、
ナナノは、一度、ギリっと奥歯を強く噛みしめてから、
「アスカ……今日、昼休み、屋上」
そう言って、ウラスケたちに背を向けて、
足早に、この場から去っていった。
ウラスケは、戦慄したまま、彼女の背中が見えなくなるまで見送ったところで、
アスカに視線を向けて、
「おいおい……なんや、なんや。マジで、どしたん?」
うかがうように、腫れものに触るように、そう声をかけると、
アスカは、冷静なすまし顔で、
「少し話があるって言われただけ。あなたは気にしなくていい。いつものことよ」
「……さっきみたいな地獄の空気が、いつものことなん?」
「そうよ。知らなかった? 女の子って、だいたい、みんな、あんな感じで会話をするわ。いわゆる、ひとつの、あるあるってやつね」
(そんな生き物、おってたまるか……)
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