センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
29話 黒いうずき。
29話 黒いうずき。
アスカは、ボタンを外しおえると、
躊躇なく脱ぎ捨てて、
グイっと、中に着こんでいるTシャツも脱いだ。
そして、上半身は、『実用性だけを重視しているスポーツブラ』のみとなった。
アスカが、その最後の守りであるブラにも、迷いなく手を伸ばしたところで、
さすがに、
ウラスケも、
「やめぇや、どしたんや」
彼女の腕を掴んで、脱ぐのを阻止する。
――が、
「いいから、見て」
彼女の強い態度におされて、
ウラスケは、彼女の腕から手を離す。
アスカが、ブラを脱ぎ去ると、
胸の真ん中に、
「それは……」
「やっぱり、見える? これ、他の人には……見えないみたいで……」
アスカの胸には、まがまがしい黒いキズ(左乳首の上部分から右乳首の下部分にかけて、まっすぐ斜めに一本の線のように)が刻まれていた。
「これ、もしかして……」
「うん。ネオバグが、初めて私の精神を犯したときに出来たキズ……両親をこの手で殺した翌日……これが刻まれていることに気づいて……」
「それ……いたむのか?」
「うん……ズキズキして、すごく疼(うず)く……でも、今までは、私以外、誰にも見えなかったから、誰にも相談できなくて……」
「……」
そこで、アスカは、胸を抱えて、
「くるしい……」
「だ、だいじょうぶか?」
うずくまったアスカの肩を支えるウラスケ。
そんな、自分を支えてくれるウラスケに、
アスカは、濡れた目で、
「さすってもらえたら……少しは……楽になると思う……」
「そ、そうか……わかった」
そう言って、ウラスケは、
一度、グっと、両眼を閉じてから、
覚悟を決めて、
彼女の胸に刻まれた黒いキズに、手をあてた。
そのキズは、まるで、騙し絵のようで、
キズ特有の凹凸などはなかった。
サラサラしていて、
少し暖かい。
少し強く押すと、指先がフニャリと沈んだ。
「なでるだけじゃなくて……もう少し……強く……さすって」
「強くって……いや、でも……これ以上は――」
「いいから」
焦れたような強い口調でそう言いながら、アスカは、ウラスケの首に手をまわして、
「握るくらい、強く……おねがい……そうじゃないと……苦しい……死にそう……」
いわれて、
ウラスケは、
「……っ」
グっと、奥歯をかみしめながら、
彼女の胸のキズを、強くさする。
フニャリとゆがむ胸を、強く、強く。
彼女の肌は、とても白く、おどろくほど柔らかかった。
スルスルと手が流れて、
全身の気が、指先の神経に集まった気がした。
溢れ出る脳汁。
不自然な勢いで体温が上がる。
頭が溶けそうになって、つい、手を離しかけたが、
しかし、
「まだ、疼くから……おねがい、もっと……」
彼女にそう言われて、
ウラスケは、仕方なく、また歯を食いしばった。
夜はまだ、はじまったばかりだった。
――ちなみに、彼女の『疼きや痛みがある』という発言は、ウソだった。
この黒いキズが、ネオバグの発現によって刻まれた跡なのは確かだが、
別に、痛みもうずきもしない。
これは、あくまでも『彼女が、ネオバグの支配下に堕ちた証』でしかなく、彼女を蝕むような代物ではない。
だが、完全なウソではなかった。
胸に痛みがあって、奥が疼くのは本当だった。
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