センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

23話 学習完了。


 23話 学習完了。


「ぼくの全部で、あんたを潰す」

 ウラスケは、そう宣言した直後、
 ハァァァァァっと長く息を吐いた。
 まるで、体の中にある二酸化炭素を全て排出しようとしているかのように、

「……はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……」

 吐き切って、少しだけ酸素を取り入れる。
 リズミカルな呼吸。
 自分の中へと深く、深く、深く、潜っていく。
 どこまでも、どこまでも、
 まるで、世界一高い場所から、世界一低い場所に向かって落下しているかのように、
 はやく、深く、
 底へ、底へ、底へ。



「――学習完了――調整終了――」



 ボソっと、小さな声でそう言うと、
 タンッ、
 と、地を踏みしめる足に、力を込めた。

 虹宮の視界から、ウラスケが消えて、
 ――そのコンマ数秒後、

「ぐがぁ!!」

 背骨の軋みを感じた虹宮は、

「ぐぅ!!」

 即座に奥歯を食いしばって、

「うらぁ!!」

 全身を高速で回転させて、背後に回ったウラスケに蹴りをいれようとするが、



「ズレたな、残念」
 ――『重心の軸』を、そんだけズラしたら、そら、こうなってまうよ。



 おそろしく短い時間の中で、
 しかし、確かに、ウラスケの言葉が、虹宮の耳に届く。

 気付けば、かいくぐられ、
 踏み込まれて、
 そのまま、

「ぐぶふぉっっ!!」

 どぎついカウンターが、顔面をとらえていた。

「ぶはぁっ! くっ……なんでっ……ぐっ」

 疑問を抱いているヒマもなかった。
 気付けば、ウラスケの姿がまた消えていて、

「あんたは間違いなく強いけど……緊急時における『姿勢の制御』が、まだまだお粗末やな」

 死角ギリギリに潜んでいたウラスケは、そう呟きながら、
 虹宮の腕めがけて、
 腰を決め、
 左の拳を引きながら、
 右の拳を、豪速でつきだす。

 ――それは、達人の領域に至った、美しい『突き』で、
 だから、

「ぐがぁあああああああ!!」

 バギリッ!!
 と、豪快に、骨の砕ける音と、痛々しい悲鳴がこだまする。

 ウラスケは言う。

「あんたは確かに、武の髄を理解しとるっぽい……おかげで、『マネしただけ』やのに、ここまでの威力が出せた。あんたはすごい」

「……ぐぐぅ……」

 信じられないものを見る目でウラスケを睨む虹宮。
 ウラスケは続けて、

「ただ、あんたは、まだまだ圧倒的に修練不足やな。反復が足りん。あんたはすごいけど、現状やとそれだけ」

 そんな評価を受けた虹宮は、
 ギリっと奥歯をかみしめつつ、

「……お前の、これまでの発言を鑑みると……『武の髄』を認識したのは、『おれの動きを見た時が初めて』だと受け取れるのだが……そこに間違いはないか?」

「そこに『間違い』なんかあるわけないやろ。普通に中学生やってて『武の髄に触れる機会』なんかあるわけないからな」

「……となれば、当然、おれよりも、お前の方が反復の回数は足りないはず」

「そうやな。当然」

 快活な返事を受けて、
 虹宮は、また、奥歯に圧をかけつつ、

「……なのに、なぜ、おれよりも……」

「鋭く動けるかって?」

 そこで、ウラスケは、少しだけ明後日の方を見てから、

「あんまり言いたくないんやけど……ウチの家系は、全員、異常にスペックが高くてな。ぼくも、ほんの少しだけ……『変わった特技』を持っとる」

「……変わった特技?」

「詳しく説明したら、ちょっと複雑で面倒なんやけど……まあ、簡単に言えば、『集中力』やな」

「……はぁ? しゅうちゅ……?」

「ぼくはな……他の人よりも、集中力が高いんや」

「なんだ、その小学生の通信簿みたいな自己評価は……な、ナメているのか……?」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品