センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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22話 もうやだ。


 22話 もうやだ。

「そこらの中3みたいに退屈な人生の中で、『世の中つまんねぇ』って文句たれながら、ダラダラして……『そんな当たり前の権利』すら許されない、おれらの気持ちがお前にわかるか、クソガキ」

「……」

「今のおれたちは、ガチで猫の手も借りたいほど忙しいんだ。あっちこっちで、ネオバグが沸きまくって、朝も夜もクソもなく出動して……殺しても殺してもキリがなくて……」

 虹宮は、ガシガシっと強めに頭をかきむしりながら、
 疲労に濡れている目をウラスケにクギ刺して、

「頼むから、邪魔するな。必死になって、世界のために、命をかけて闘っているおれたちの、邪魔をしないでくれ。お願いだから」

 虹宮が、そこまで言ったところで、
 それまで黙っていた繭村アスカが、
 ポロポロと涙を流しながら、

「もういい……」

 かすれた声で、

「もういいから……殺して……もういやだ……」

 頭をかきむしり、
 かすれた声のまま、

「……ぜんぶ……辛い……苦しい……もうヤだ……」

 溢れだす想い。
 痛みをのせて、
 こぼれおちた、
 その言葉を受けて、
 ウラスケは、

「わかった」

 首を縦に振った。

 繭村の心がキュっとしまった。
 涙がまたこぼれた。
 ツーっと、重力にひっぱられて堕ちる。

 自分の言葉が、世界に受理されたっていうのに、
 喜びなんてカケラもなくて、ただ心を刻まれる。

 激痛。
 全部が痛かった。
 ぜんぶなくした。

 本当に言ってほしかった言葉は、
 本当に叫びたかった言葉は、
 けっして――



 ……なんて、絶望の底で奥歯をかみしめている繭村とは違い、
 虹宮は、ホっとしたような顔をしていた。

 ――ようやく、この面倒なミッションも終わる。
 ――さて、次のミッションは……

 そんな、ズレた時間が、二秒ほど経過してから、

 ウラスケは言う。




「繭村アスカ。ネオバグ関連の問題が全て解決したあと、それでも、死にたかったら、ぼくが、この手で殺してやる」




「……っ」

「約束してやる。だから、しばらくの間、ちょっと黙ってろ。今のぼくは、こいつの対処でメチャメチャ忙しんや」

「……」

 涙があふれた。
 グっと、胸の奥からあふれでる涙。

 大きく見開いた目で、アスカは、ウラスケの背中をジっと見つめる。

 止まらなかった。
 『何か』が、胸の奥から溢れ出て、とまらなくなった。

 声にならない。
 想いが、喉につまって、窒息しそうになった。


 本当に叫びたかった悲鳴は、無慈悲な現実によって、かき消されたのに、
 けれど、繭村アスカの心は、本当に言ってほしかった『救い』に包まれた。

 まだ何も終わってなどいないのに、
 心ではファンファーレが鳴り響いていた。



 まっすぐに前を見続けるウラスケ。
 そんなウラスケをまっすぐに見続けるアスカ。
 ――そんな二人の姿を一瞥してから、
 虹宮は、
 深い溜息をついて、

「ウザいなぁ……中学二年生って……ほんと、もう……はあぁ」

 ボソっとそうつぶやいてから、
 虹宮は、両の拳を握りしめた。

「最後の最後の最終確認だ。答えに変わりはないか?」

「もう二度と聞かんでええ。どうせ、平行線や……」

 ウラスケは、そこで、

「ぼくの全部で、あんたを潰す」


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