センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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15話 なんで……


 15話 なんで……

「一番の問題は、やはり、ぼくが勝てるかどうか……ネオバグとかいうバケモノが、実際のところ、どの程度の脅威なんか……その具体的な詳細……現状やと、情報が足りん……スカウターでもあれば楽なんやけど……」

 ブツブツと、ここまでにそろった情報を口に出しながら、状況を整理していると、
 そこで、
 アスカが、おずおずと口を開いて、

「さっきの人達……神話狩り、だっけ……? あの人たちは、私の中のネオバグが成長したら危険だって言っていた……」

「そうやな。確かに言うとった。――で、それが?」

「感じるの……私の中で、ネオバグは大きくなっている……時間が経つにつれて、どんどん、どんどん、肥大していっている……」

「……」

「対処すべき……これを放置しておいたら、きっと、大惨事になる……だから……お願いだから、私を……ころし――」

 そこまで言ったところで、
 繭村アスカは、
 田中ウラスケに、ギュっと腕を掴まれた。

 ハッキリと、痛みを感じる強さ。
 温かさも感じたけれど、それ以上に、何か強い意志が伝わってきた。

 アスカは顔をあげて、ウラスケと目を合わせた。
 ウラスケは、ジっとアスカの目を見ていた。

 ウラスケの目は、決して、綺麗に澄んでなどいない。
 適度に握っていて、わずかに腐っている。
 だから、少しだけゾっとしたけれど、
 同時に、それ以外の感情も浮かんできた。


「……」


 黙って、視線を合わせ続ける数秒。

 ウラスケの濁った目は、明確な怒りに染まって、少し赤かった。
 彼の有無を言わせない瞳を前にして、アスカは何も言えなくなる。

 吸い込まれそうとか、引き込まれるとか、そんな言葉は使えない。
 ウラスケの目は、ただただ、ジっと重かった。
 重かったけれど、ゾっとしたけれど、どこかで、確かにホっとした。
 ……落ちてしまったと思った。

 何も言えなくなったアスカに、
 ウラスケは言う。

「強くなったるわ」

 宣言。
 宣誓。
 あるいは命令。

 アスカに対してではない。
 自分に対して、『覚悟の質を限界まで上げろ』という号令。

「お前の中のソレが、どれだけ肥大しようと、余裕をもって対処できるくらい強くなったる」

 ウラスケの発言は、ウラスケ自身に対する覚悟の表明。
 だから、アスカは、こうして、ジっと視線を合わせているのにも関わらず、
 『自分に言われている』とは全く思えなかった。

 しかし、
 だからこそガツンと届く言葉というのもある。
 『お前のため』と言われたら、信用するのに時間がかかるけれど、
 『自分のためだから』と態度で示されたら、信用せざるをえない。

「心配するな。必ず、お前の中のネオバグを殺したる。お前からひっぺがして、バラバラにして、ケジメをとらせたる。絶対に」

 とても、とても、強い言葉。
 グっと、魂を握りしめてくるようなメッセージ。
 頭がおかしくなるくらい『信用』できた――けど、
 ちゃんとした理解は追いつかない。
 だから、アスカは、

「……なんで……」

 当然の疑問符を口にする。


「なんで……そこまでしてくれるの? どうして……私を助けてくれるの……」


「……」


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