センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
140話 悪いな、センエース。
140話 悪いな、センエース。
「タナカトウシからのメッセージだ。そのまま伝える……『やっぱり、お前、ワシが知っとるセンエースやろ』……とさ」
「なんで、そう思う?」
「……『なんとなく、そんな気がする』……だとよ」
「アホの答えだな」
「自分でもそう思っているようだ」
「はっ……」
言葉を交わし合っている間も、
空間は歪んでいた。
次元がズタズタになっていく。
世界そのものがボロボロになっても、
二人の闘いは、情け容赦なく激化していく。
互いが、互いの空気を掴み始める。
となれば、今度は、呼吸の崩し合い。
届いたと思ったが、すぐにオーラの冷遇を受ける。
清涼な状態に戻って、だからこそ、より強く熱くたぎって、
夢中を、断層にしていく。
情動の飢餓と飽食。
烈風(れっぷう)の深慮(しんりょ)が、
風雅な幽玄に熔かされて萌(も)ゆる。
高揚が連鎖して、
加速していく。
容赦なく、
無様に、
美しく、
「センエース……俺は、死ぬ気で積んできた。お前を超えるために」
「ああ、わかるさ、ソンキー。その強さに辿り着いた理由は、決して、トウシと合体したってだけじゃない。お前の根っこにある器……驚くほど強靭になっている。お前も、積み重ねてきたんだろう。俺を超えるために、俺に負けないほど。……誇らしいよ、偉大なる修羅よ」
そのセリフに滲むのは、様々な覚悟。
この上なく尊き神の王センエースの言葉を受けて、
かつて最強だった偉大なる闘神ソンキー・ウルギ・アースは言う。
「俺は、自分が積んできた全てを誇りに思っている。だが、センエース……お前は、俺以上に積んだんだろう……わかる。お前が積み重ねてきたものが、俺には、デジタルに理解できる。ほかの誰でもなく、この俺だからこそ、十全に認識できる」
ぶつけあった拳が、互いに『互い』を叩きこんだ。
暗澹(あんたん)が心地いい。
辿り着いた者同士の対話。
鬱積(うっせき)が死んでいく。
――この瞬間のために、自分は存在していた――
きっと、勘違い。
だけれど、別にいい。
互いに、互いを推服(すいふく)して、
幽寂(ゆうじゃく)な手探りを積み重ねていく。
ノイズなんてなかった。
それは、
どこまでも、いつまでも、美しい時間だった。
すべての奇禍(きか)が祝福されていく。
惨禍が艶やかに昇華されていく。
カラめ手は、事前に封殺される。
飛び道具では、もはや、互いを削り切れないと、同時に理解。
結果、超近距離での、原始的な殴り合いに発展。
異常に重たい粒子を放ちながら打たれた右ストレートは、
コスモゾーンの法則によるコンパクト化を受けていなければ、
宇宙を軽く崩壊させていたであろう狂気の一撃。
出力はほぼ同等。
頂点に達した神々の演舞。
時には、古拙(こせつ)に、
基本は、新手で、
『なんだそれ、陳腐だな』と、ノスタルジックに笑ったり、
『その逆新手は犀利(さいり)が過ぎる』なんて、瑞々しいモダンを気取ってみたり、
ロマンスグレーみたいな、堅忍(けんにん)の精神を見せながら、
たまに、端麗(たんれい)で絢爛(けんらん)なカラフルで攻めてみたり。
灼熱が舞って、
力は分解されて、
抵抗と回転が揺らぐ。
重心のズレだけが、世界の中心になって、
物理が摂理を見失って、
概念だけが満たされて、
しかして、だから、神々は――
「悪いな、センエース」
ふいに、ソンキーは、そうつぶやいた。
声が拡散する。
形なき音が、しっかりとした質量を持って、センエースの意識に届く。
「なぜ、あやまる?」
センエースの問いに、ソンキーは答える。
「お前よりも『積み重ねた絶望』は少ないのに……俺はお前と同じ領域に辿り着いた。流石に申し訳なく思う」
「……そうだな。マジで謝ってほしい。……なんつーか、まるで、古い例えみたいだ。階段とエスカレーター。あるいは、休まないウサギ。……俺が、『真』に届くまでに、どれだけの絶望を積んできたと思っていやがる……」
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