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126話 ワシは、この手で、神を討つ。


 126話 ワシは、この手で、神を討つ。

 焦りから、ミスも生じるようになった。
 ミスといっても、悪手というほどではなく、
 最善手ではなくなったという程度。
 とがめを受けるほどではない――はずだった。
 しかし、その拙いミスが、呼吸のズレを産んだ。



 いつしか、『有利不利』の配分が変わっていることに、アダムは気付く。
 手遅れの段階に至って、ようやくアダムは気付いた。
 全てはトウシの手の中。
 アダムは、すでに、からめ捕られていた。

 気付けば、
 世界という盤面には、生きがなくなっていた。

「ふ・ざ・け・る・なぁあああああ!! こ、こんな短時間で……まさか、もう、私が見えていると言うのか!!」

 激昂するアダムに、トウシは言う。

「まだ、完全には見えてへん。けど……だんだん、分かってきた……あんたの強さ……ワシの弱さ……全部、一つ一つ乗り越えて……ワシは、あんたの先に行く」

「クソガキがぁ……わ、私が積んできた全てを……私の想いを……ふ、踏みにじりやがってぇえええ!」

「強いな、あんたは、ほんまに……けど、だからこそ、ワシは、もっと高く飛べる」

 トウシの体が飛翔する。
 高く、
 高く!
 高く!!

「ワシの力は、ほとんど全部借り物……神様から貰った携帯ドラゴンと、ソンキーのパワー……ワシは、それを使っとるだけ。けど……この二つを、この世で最も上手く使えるんは、間違いなくこのワシやと断言できる!!」

 踏み込んだトウシの肢体が、さらにギュンと音をたてて加速する。
 拳に込められたオーラは、究極超神の域に達したエネルギーの嵐。

「さっきの質問に答えたるぞ、アダム! ワシは! この手で! 神を討つ!!」

 グンと、さらに重たく体重を乗せて、
 トウシは、アダムの腹部にめがけて拳を突き出した。

「がっはぁああああ!!」

 突き破られた、アダムの腹部。
 血がダラダラと流れて、砕けた臓器が飛び散った。

「ぐふっ……くそが、くそが、くそが……この私が……主上様の側仕えである、この私が……こんなガキに……こんな、こんな……ちくしょう……ちくしょぉおおお!」

 断末魔をあげてから、
 アダムは、苦々しい顔つきのまま、

「……こんなの……間違っている……」

 最後に、心底苦しそうに、そうつぶやくと、
 静かに目を閉じて、
 震える手で、
 バチンと指をならした。

 ――その瞬間、アダムは、シュンと音をたてて、その場から消えさった。
 屈辱の敗走。
 世界が、ほんのわずかな時間、風雅な無音に包まれた。
 確かな勝利を感じさせる、艶やかな静寂。


 残されたトウシは、アダムを突き破った拳を見つめながら、


「勝ったぞ……ソンキー」

 そうつぶやいた。
 その言葉に、トウシの中にいるソンキーが答える。

 ――ああ、しかと見届けた――


 ソンキーの言葉が耳に刻まれたことで、より深く、互いの魂魄が連結する。
 果てなき相乗効果。
 互いが互いの器となる。

 ――それと同じタイミングで、
 爆発に近い歓声が、トウシの耳に届いた。

 神話狩りのメンバーが、暴風のような歓喜でトウシを包み込む。

「信じられない!」
「あのアダムに勝ったぁああああ!」
「すごいよ、トウシくん!」
「ドン引きだよ、トウシくん!」
「イっちゃってるね、トウシくん!」
「もはや、人間じゃないよ、トウシくん!」

 褒め称えられて、

「……」

 トウシは、当然のように、眉間へしわを寄せた。


コメント

  • キャベツ太郎

    いやー、トウシくん、お疲れ様。
    次は究極超神序列1位舞い散る閃光センエースだよ。がんばってね。
    トウシ『(絶望)』

    2
  • ノベルバユーザー341225

    マジか……

    0
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