センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
123話 慟哭。
123話 慟哭。
「主上様の強さを前にすれば、私などゴミ以下。何をしようと、どうしようと、かすりキズ一つつけるコトすら出来ない。それが私の神だ。全てを超越した神の王。ありとあらゆる全ての頂点に立つ、この上なく尊い命の王」
「……」
「その事実と、身に起こっている現実を踏まえた上で……さあ、もう一度、ほざけるものなら、ほざいてみせろ。貴様は、誰を討つつもりなんだ?」
「……」
「ちなみに言っておこうか。私と貴様の闘いが始まる前に、主上様は私にこう仰った。タナカトウシ以外、全員、殺していいと」
「……」
「私は、主の命に従い、貴様以外の全てを殺す。正確に言おう。今から十秒後に、あの女を殺す。アカツキジュリア。貴様とただならぬ関係にあるあの女を殺す。貴様の目の前で、頭蓋骨と脳味噌を砕いて殺す」
「ジュリアには……触るな……殺すぞぉ……」
「まだ吠える事はできるようだな。しかし、それだけか? 私を倒さなければ、あの女は死ぬぞ? 残りは5秒。もし、立ち上がって、まだ私に挑むという意志を示すのであれば、残り時間は延長してやる」
その言葉を受けて、トウシは、
「……ぐぅ……うぅ……」
フラつきながら、
よろけながら、
どうにかその場で立ち上がった。
拳を握り、
かすむ目を見開いて、
「延長時間は……どのくらい……?」
かすれた声で尋ねる。
アダムの言葉が嘘かどうかと考える余裕すらない。
ただ必死に立っているだけ。
涙にぬれた声。
痛々しい、弱者の悲鳴。
その姿を見たアダムは、
「……強いな……」
ボソっと、そう言ってから、
「貴様は強い。ヒーロー足りうる器。……しかし、何も守れない。力を持たないから。心がいくら強かろうと、実力がなければ、何も守れない。それがこの世界の真理だ」
「……」
「延長時間は倍の10秒。すでに経過した。というわけで、今からあの女を殺す」
「っ……やめ――」
「貴様の言葉は、もう、私には届かない。己の弱さを恨め」
そう言って、アダムは、トウシに背を向けて、ジュリアの方へと歩いていく。
その背中を見つめているトウシ。
『アダムが、ジュリアを殺そうとしている』という事実を再認識すると、
トウシの足に力がこもった。
本当なら、もうとっくの昔に動けなくなっているはずなのに、
足が重たくて、視界が歪んでいて、
全身に激痛が走っていて、
立っているのもやっとの状態なのに、
――それでも、
「お前の! 相手は! ワシやああああああ!!」
飛びだした。
オーラを爆発させて、それを推進力にして、
何の計算もない突撃!
全てを賭した一撃も、
「ただ喚(わめ)いて暴れるだけでは何も成せない」
優雅に流されるだけで終わった。
フワリと、緩やかに、
ダメージすら負わせてもらえずに、
ただ、流された。
つまりは、結局のところ、傷一つつけられなかったというお話。
――アダムは強すぎる。
「こ、こんなの……」
ついに、我慢できなくなったようで、
トウシが、
「こんなのおかしいだろぉおおおお!」
天を仰いで叫ぶ。
「俺は間違いなく天才だ! ガチャは裏技で鬼引きしまくった! なにより、俺は、究極超神ソンキーの手ほどきをうけたんだぞ! あれだけ強い神様から武を学んだんだ! 才能があって、裏技も使って、神の贔屓も受けたのに!! なのに、なんで! なんで、こんな! こんなのゲームとして成立してねぇ! 不条理なんてもんじゃねぇ!」
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