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116話 ソンキースタイル


 116話 ソンキースタイル


「アルテマトランスフォーム・モード【ソンキー】」


 宣言の直後、
 トウシの全身を覆っているドラゴンスーツが、ビキビキと音をたてて変形していく。
 それは、美しさの粋を集めたような、闘神の姿。
 悪魔のようにも見えたし、天使のようにも見えた。
 奈落の銀と凍てつく黒の結晶。
 果てしなく神々しい異形の一等星。


「これが、今の俺の全部だ。さあ、いくぞ、ミシャンド/ラ。……殺してやる」


 加速する体躯が、空を裂いた。
 まるで、強さという概念の向こう側を魅せつけようとしているかのよう。
 獰猛な神。
 重なり合う、黒と銀の螺旋。

 ただ強いだけではなく、数歩踏み込んで強かった。
 純粋な理解を拒んでいる、ヤンチャな武。

 謳うように、
 弾くように、
 揶揄するように、

 トウシは、さらに加速する。
 さらに、さらに、先へと進む。

 そんなトウシの非常識に対し、
 ミシャは、

「私の闇を――」

 真正面から、

「――ナメるなよ」

 対峙する。

 凶悪な強さを誇るトウシ。
 そんなトウシとミシャの力は、驚くほど拮抗していた。

 全ての音が炸裂音になって、空間のあちこちにヒビが入る。
 肉がはじけて、血が乱れ飛ぶ。
 時間の経過に伴い、ミシャとトウシは、差異なくボロボロになっていく。

「強いな! ミシャンド/ラ!! あんたは、ガチャ運だよりのワシと違って、その強さを、すべて、自力で手に入れたんやんなぁ! すげぇわ! 尊敬する!!」

 ドガンと拳を叩きこみ、
 ズガンと膝を喰いこませる。

 積み重なる次元震。
 崩壊が連鎖していく。

 純度の高い暴力が、
 延々に繰り返される。

 余波だけが、影の断層になって、
 チラチラと冷たい結晶になっていく。


 肉体全てを核弾頭にして、ミシャを押し切ろうと躍起になるトウシ。


 そんなトウシに一歩も怯まず、
 ミシャは、

「タナカトウシ! 貴様は異常だ! 狂っている!!」

「うれしいねぇ! そんなに褒めてもらえて!!」

「貴様のような不条理を、私は許さない! 貴様の強さは認めるが、貴様の存在は認めない! 認めたくない!!」

「好きにせぇ! あんたがどう思おうと知ったことやない! ワシは、ただ、あんたを超えて、神を討つ!! 策をなくし、切札も全部さらして、もう何もなくなったが! それでも! ワシは、絶対に負けん! 絶対に守る! ワシの全部で! この絶望を殺したる!!」

 ズタボロの姿で、互いに、大声を張り合う。
 言葉と拳を交わし合い、
 互いの奥深くへと潜り、
 覚悟を晒し合って、

 ――だから、
      ついには、



「……っ……こんな……ふざけたこと……」



 ミシャは、ガクリと、膝をついた。
 勝敗が決した瞬間。
 力なくうなだれて、最後に、

「まさか……この私が……本当に負けるとは……っっ……ありえない……ここまでくると、もう笑えない……」

 憎々しそうにそう言ってから、
 スゥっと、音もなく、
 その場から姿を消した。

 完全に消えてしまったミシャの残滓を見つめおえると、
 トウシは、

「……はぁ……」

 天を仰いで溜息をついた。
 深い、深い、溜息。

 気が抜けたのか、先ほどのミシャンド/ラと同じように、ガクっと膝から力が抜けて、その場にへたりこんでしまう。
 そんなトウシを、最初に支えようと駆け寄ったのは、やはりジュリアで、
 トウシの体を支えながら、

「遅刻するほど修行したなら、もっとスマートに勝ったら? ほんとうに、あんたはダサくてキモい」

 いつもと、なんら変わらない言葉を投げかけた。


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