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115話 タナカトウシが果たすべき義務。


 115話 タナカトウシが果たすべき義務。

「うぬぼれんな、カスが。お前を殺すぐらいで、神様に勝てるか。神様、ナメんな。つぅか、黙れ言うとるやろ。何度も言わせんな」

 先ほどと違い、今度は彼女の目をジっと睨みつけて、
 ハッキリと、明確に、拒絶の意思をしめす。

 けれど、ジュリアは揺るがずに、

「このままだと、あんたはミシャンド/ラに殺されて死ぬ」

 言い切った。

 その不愉快極まりない断言を受けて、トウシは、ギリっと奥歯をかみしめてから、

「きめつけんな」
「あんたを殺すのはあたしだ」
「そのセリフ、聞きあきた」

 そこで、ジュリアは、

「あんたが……他の誰かに殺されるのは我慢できない」

 消え入りそうな声で、

「だから、あたしを殺して、生き続けろ。これは……命令だ」

 多くの想いが込められたメッセージ。

 分かっている。
 トウシは理解している。
 彼女の気持ち、
 彼女の想い。

 当然、わかっている。
 わかっているからこそ――

「ほんまに、お前は、人の話を聞かんやっちゃなぁ。てか、なんで、ワシが、おまえの命令を聞かなあかんねん。ふざけ――」

 そこで、ジュリアは、トウシの言葉を遮るように、

「あんたを殺すのはあたしだ」

 ボソボソと、少しだけトーンの下がった声で、そう言ってから、

「絶対に、誰にも……譲らない……絶対に……絶対に!!」

 想いとともに、声が膨らんでいく。

「あんたは、あたしの全部を奪った! 過去も今も未来も!! 命も! 想いも! 全部、全部、全部! だから、あんたには! あたしの命令を聞く責任と義務がある! 分かったら、さっさと、あたしを殺せ!」

 悲鳴になった叫びが、トウシの全身を包み込んだ。
 尖った想いが突き刺さって、血が流れた気がした。
 ドロっと、ケガれた重濁性を持って、流れていく。

 トウシは目を閉じた。
 受け止めた想いを咀嚼して、飲み込んで、
 その上で、だから、

「ワシの責任と義務は、お前を殺すことやない」

 いつもより、少しだけ丁寧に言葉を扱う。
 壊れてしまわぬように、
 砕けてしまわぬように、

「……ワシが果たすべき義務は……」

 まるで、自分自身に、

「死んでもお前を守ること」

 刻み込むように。

 純粋で無垢な、
 覚悟を背負う。

「そのためなら、いつだって……どんな不可能でも可能にしたる……」


 そこで、トウシは、キっと視線を強めて、


「これだけは……神様とやる時まで隠しときたかった……最後の最後の切札だけは……神様にぶつける為のとっておきにしておきたかった」

 苦々しい口調で、

「なんの策もなく神様に特攻……それはあまりにも無謀。せやから、『これ』だけは、マジで隠し球にしておきたかった。『超神化』が限界と見せかけて、神様との闘いを迎えたかった……んやけれど……どうやら、ミシャンド/ラが相手やと、そんなナメた事を言うてられる余裕はないようや……しゃーないな」

 その言葉を受けたミシャが、
 苦虫をかみつぶしたような顔になり、

「はぁ? ……ま、まさか、まだ奥の手があるというの?」

「最後の最後。マジの最終切札。もう、マジで、これ以上はない……だからこそ、マジで見せたくはなかったんやけど……」

 つぶやいてから、トウシは宣言する。


「アルテマトランスフォーム・モード【ソンキー】」


 宣言の直後、
 トウシの全身を覆っているドラゴンスーツが、ビキビキと音をたてて変形していく。
 それは、美しさの粋を集めたような、闘神の姿。
 悪魔のようにも見えたし、天使のようにも見えた。
 凍てつく黒と冒涜的な銀の結晶。
 果てしなく神々しい異形の一等星。

コメント

  • キャベツ太郎

    やっと追いついた

    2
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