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110話 彼がきた。


 110話 彼がきた。

「本物の神であれば、私程度の絶望は、鼻歌交じりに乗り越えてしまうだろう。しかし、貴様では不可能。私すら超えられない」

 言ってから、ミシャは、虹宮の頭をつかんでいる手に力を込めた。
 血管が浮かび上がった。
 その直後、ゴミのように、虹宮をブン投げる。
 ズガン、ズガンと、二回ほど地面でバウンドしたところで、

「く……」

 なんとか、両足で踏ん張る。
 首の骨がきしんでいて、左足に激痛が走っている。

 こんなものは、闘いでも、なんでもなかった。
 ただ、虫けら扱いされているだけ。
 鼻歌まじりにボコボコにされているだけ。

 まったく抵抗できない。
 差がありすぎる。
 何千年戦い続けたところで、
 虹宮では、ミシャに勝つことはできない。

 ――そんな状況下でも、まだ、虹宮の心は折れていなかった。
 キっと、瞳に力を込めて、
 ミシャをにらみつけている。

 虹宮は、決して折れていない。
 まだまだ戦える。
 それは間違いなく事実。
 だが、しかし、

「ダメだ……諦める気はないけれど……今のおれだと……勝ち筋が見えない」

 心はまだ熱く燃えている。
 最後の最後まで、あきらめずに戦い続けられる自信がある。

 しかし、どうしても『勝てる』とは思えなかった。
 勝利のビジョンは皆無。

 虹宮は決してバカじゃない。
 だから、『勝ち方が分からない』という事実からは目をそむけることができない。
 やる気ばかりが逸って、肝心の手段は見えてこない。
 『気が逸るだけの無意味さ』が理解できないほど馬鹿じゃない。

 虹宮は、『絶対的な絶望』を前にして、『それでも、限界以上の勇気を叫び続ける事ができる変態』ではない。

 動き方を見失った虹宮。
 その後ろで、絶望の底に沈んでいる神話狩りの面々。

 そんな彼・彼女らに、
 ミシャは、右手の掌を向け、

「ゲームオーバーだ。そろそろ終わりにしよう。私程度すら超えられない者に、神は価値を見出さない」

 オーラと魔力を集中させる。
 ギュンギュンと膨れ上がっていく、邪悪な波動。

 その光景に、神話狩りのメンバーは、死の輪郭を見た。
 『死に際』に慣れているわけでもないのに、
 神話狩りの面々は、みな、自分の終わりを明確に理解した。

 決して抗えない『死』が目の前にあるという理解。
 把握する。
 ストレスはなかった。
 ただ、からっぽになった。
 耐えきれないせいだろう。
 心が、痛みを放棄したのだ。

「異次元砲」

 邪悪なエネルギーが一点に集中して、放出された。
 無慈悲の照射。
 全てを飲み込む暴力の極限。

「……おわった」

 誰かが言った。
 明確な命の最後。

 体が冷たくなった。
 血が止まったみたい。
 涙が出て、
 意識が――





「ディザスター・レイ!!」





 叫びと同時、
 暴力的なエネルギーの波動が、ミシャの異次元砲と対峙する。
 ズガバチンと奇怪な音をたてて、黒い稲妻が周囲に走る。

 同じ無属性同士でぶつかりあう強大な二つのエネルギー。

 無限を想起させる、次元を喰い破らんとしている波動は、しかし、
 節操のないぶつかりあいによって、いつしか質量を失う。

 わずかな無音が世界を支配した。
 神話狩りのメンバーは気付く。

 ――彼が来た。


「なんというか……まるでヒーローみたいなタイミングで登場してもうたけど……最初に、ちゃんと言うとくで。見はからってた訳やないからな。ただ、ソンキーとのダイブに没頭しすぎただけ。つまりは、完全な遅刻やな。陳謝する」



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