センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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108話 絶対的に埋まらない差。


 108話 絶対的に埋まらない差。

 ほんの数秒で、30人ほどが熔かされた。
 抵抗などできるわけがない。
 絶対的な差がそこにはあった。

 ここまで生き残った優秀な者たちを、ミシャは、アリでも潰しているかのような軽さで、鼻歌まじりに刈り取っていく。

 その、あまりにも救いがない地獄の光景に、
 隊長クラスの面々も、つい、数秒放心してしまっていたが、

「や、やめろぉおおお! おれがやる! おれと闘え!!」

 我に返った虹宮が、ダンッっと、地面を蹴って飛びだし、突撃する。
 これほどの絶望的状況下でも、体にムチを打てたのは、
 心に神が宿っているからに他ならない。
 もし、神の傀儡となった経験がなければ、
 あまりの狂気にあてられて、無様に失神していたことだろう。


 ――虹宮は、ミシャの後頭部めがけて、全力の拳を叩きこもうとするが、

「闘う?」

 背後からの攻撃を、ミシャは、ほとんど動くことなく、ヒョイっと軽く避けて、

「うぬぼれるな。いい加減にしろ」

 グイッと、体を半回転させて、勢いのついた拳を、虹宮の腹部に叩きこむ。

「がっはぁああああ!!」

 白目をむいて、口から盛大に血を噴射する虹宮。
 意識は飛んでいないが、激痛が過ぎたあまり、一瞬、頭の中が完全に真っ白になった。

「貴様ごときが、私と闘えるわけないだろう。身の程を知れ」
「うぐぐ……ぐっ……身の程をわきまえていようと、いなかろうと……」

 虹宮は、口から大量の血を垂らしながら、
 それでも、ギンっと目を強く光らせて、

「抵抗しなきゃ……死ぬだけだ……ただでは死んでやらねぇ……最後の最後まで……抗ってやる」

 決死の顔をしている虹宮を、ミシャは、

「……」

 ほんの数秒、黙って見つめた。

 わずかな静寂。
 張り詰めた無音を切り裂いたのは、岡葉。

「に、虹宮を支援する! こうなったら、全力でミシャンド/ラを倒すしか生き残る術はない!」

 覚悟を決めたというより、決めざるをえなかったという叫び。
 迷いが許されるなら、永遠に悩んでいたいところだが、
 現状はそうもいかない。

 虹宮が言ったように、黙っていたら殺されるだけ。

 神話狩りのメンバーは、全員で、ただ一人を殺すためだけに尽力する。

 己に出来る全てを賭して、
 ミシャンド/ラという脅威に立ち向かう。

 ――けれど、

「武の基礎すら知らないガキども……ただ、与えられた力を振り回しているだけの素人……そんなカス共が、この私と闘えるワケがない」

 ミシャは、終始、圧倒的だった。
 すべてが、鋭くて速い。
 充実したオーラと魔力は、常に、よどみなく流動していた。
 魔法も体技も、すべてが最高位。

 『距離』が、彼女に平服していたんだ。
 空間に溺愛されているミシャは、
 全方位からのベクトルに対し、
 常に、複素数であり続けた。

 実像なのか、虚像なのか、
 そんなナゾナゾだけが、神話狩りの意識を汚していく。

 アリと恐竜の闘い。
 つまりは、闘いになどならない。
 ただの蹂躙。
 壊されるだけの時間。

 次元も、格も、ケタも、全てが違う。
 ミシャは強かった。
 強すぎた。

 ――だから、

「ウソだ……ありえないよ、こんな強さ……こんなの、どうしようもないじゃないか……」

 岡葉は、悲痛の声をもらした。

「トウシくんがいても……ここまで差があったんじゃ……勝てるわけがない。こんなの反則だ……ここまでの強さだったなんて聞いていない……こんな理不尽……あっていいわけがない……」


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