センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
81話 対話。
81話 対話。
少しだけジュリアに席をはずしてもらったトウシは、
誰もいない多目的室で、座禅を組んで目を閉じていた。
スゥっと息を吸い、ハァと吐く。
それを、何度か繰り返してから、
「ソンキー……返事をしてくれ」
そう声をかけた。
反応はなかった。
トウシは、もう一度、
「頼む……もう一回、力を貸してくれ」
そう声をかけると、
一瞬、
風が吹いたような気がした。
キィンと、共鳴するような音がして、
そして、
静かに、
その声は響いた。
――お前はすでに、俺を理解している。貸せる力などない――
脳内に響くその声は、
さわやか系のイケボなのに、ズンと、腹の奥に響く重厚さがあった。
――トウシは言う。
「……『パワーをよこせ』とか『指導してくれ』とか、そんなんとちゃうねん。……ただ、ワシと闘ってほしいんや」
トウシは、全力で言葉を選びながら、
「これまで、ワシは、与えられた力を振り回すだけのお人形さんやった。けど、そのままでは、神様はもちろん、ミシャンド/ラにも勝てん。あの狂気的なバケモノ共と渡り合おうと思えば……ワシ自身が、ちゃんと積まなアカン」
――他人に稽古をつける趣味はない――
ソンキーは、そこで、息継ぎをして、
――得意ではないし、やりたいとも思わない。俺は俺が強くなる事にしか興味がない。前に、少しだけ手を貸してやったのが限界だ。アレ以上の何かをする気はない。そもそも、前に手を貸してやったことが、すでに例外中の例外なんだ。お前は俺を知らないから、よくわからんだろうが、俺の事をよく知っている周りの連中が、『お前に俺がやった事』を知れば、全員、度肝をぬかすだろう――
「わかっとる。あんたの事は……なんとなく分かる。『己の強さ』にしか興味がない、徹底して『他者』に無関心な、孤高の最強神」
――『元』最強神だ――
「ちゃんと分かっとるよ。……バロールとの闘いで、魂を少しだけ共有した事で、ワシはあんたの事を、ほんの少しだけやけど、理解する事ができた」
だから、これまでのピンチでは頼らなかった。
どうせ応えてくれないだろうと思っていたから。
しかし、もはや、ここまできてしまうと、頼らざるをえない。
恥も外聞もなく、
遠慮もマナーもなく、トウシは詰めていく。
「だから、『力を与えてください』とか、『稽古をつけてください』とか言うつもりはない。ただ純粋に、まっすぐに……『殺すつもり』でええから……ワシと闘ってくれ」
ソンキーは答えない。
無音の中で、
トウシは続けて、
「こっちの望みばっかり言うつもりはない。メリットを提示する。ワシと闘えば、あんたは、より強くなれる」
――興味深い発言だ。続けろ。聞いてやる――
「あんた、ぶっちゃけ、アホやろ?」
――勇気のある発言だ――
「頭が悪いって意味とちゃうで? 純粋戦闘バカって意味。んー、なんていうたらええかな……あんた、『闘う時は、むき出しでありたい』と思っとるやろ?」
――それがどうした――
「別にそれはええ。『その状態やないと出せん力』もある。完全に無駄を削ぎ落す事でしか届かへん、『没頭の果て』でこそ輝く武の結晶」
――結局のところ、純粋な戦闘力を磨く事でしか根源的な強さは得られない。小細工を無駄だとは思わない。奇襲を卑怯だとは思わない。だが、俺は、それら全てを飲み込む本物の最果てを求めているというだけの話――
「ワシはその逆を追求してきた男や――」
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