センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
80話 タナカトウシにしか出来ない不可能。
80話 タナカトウシにしか出来ない不可能。
廊下に出て、手ごろな多目的室を見つけると、トウシはジュリアと一緒に、その中に入った。
若干、ヨタつきながら、奥まで歩みを進めると、
トウシは、壁にもたれかかり、ズルズルと崩れていって、ペタンと尻をつき、
天を仰いで、
「すまんかったのう……いろいろと……気ぃ使わせて」
ボソっと、ジュリアにそう声をかけた。
言われたジュリアは、ツンとした顔のまま、
「ここからは、総力戦を強制される。つまり、ここで、チームが折れると、万が一にも勝ち目がなくなるってこと……あんたを殺すのは私の仕事。他の誰にも渡さない」
ボソっとそう言った。
そんなジュリアの、いつもとまったく調子の変わらない発言を受けて、
トウシは、フっと鼻で笑ってから、
「けど……ムリやで……ミシャンド/ラには勝てん……あいつは強すぎる」
ボソボソと、
「弱点なんかない……実際に対峙してハッキリと分かった。あいつを相手にする場合に限り、『こうすれば勝てる』なんていう攻略法はない……あの女は、純粋に、ワシよりも遥かに強い……ワシでは想像できんくらいの長い時間をかけて、ワシでは想像できんくらいの絶望を乗り越えて、ワシでは想像もできんくらいの研鑽を積んだ結晶……それが、あの女の実態や……ワシ程度が勝てる訳がない」
「で?」
「で、だから、つまり……」
そこで、トウシは、スっと立ち上がって、
スゥ、ハァっと深呼吸をしてから、
――ギュっと、ジュリアを抱きしめた。
そして、そのままゆっくりとキスをした。
少し長いキス。
30秒ほど、唇を重ね合ってから、
トウシは、
「これから、死ぬ気で、あいつを殺すための準備を整える。生き残るために死力を尽くす。お前を守るために、一緒に帰るために……ワシは、これから、ワシの全部を賭してあがく……けど、それでも……」
「それでも?」
「それでも勝てんかった時は………………一緒に死のう」
「バカじゃない?」
ジュリアは、虫を見るような目で、
トウシを見下して、
「絶対にイヤ。あんたと一緒に死ぬくらいなら……」
「ワシと一緒に死ぬくらいやったら……なんやねん」
「あんたより強くなって、あんたを守る。あんたを殺すのは私。私のこの手が、あんたを殺すその日まで……あんたは絶対に死なない。絶対に死なせない」
ジュリアの覚悟を聞いて、トウシは、うつむいた。
声がでなかった。
喉に、何かがつまって、声がかすれて、
それでも、トウシは必死になって、のどをひらいて、
「それ……ワシが……お前に言わなあかんセリフやなぁ……」
そう言うと、ジュリアは、まっすぐに、トウシを見つめて、
「あんたは、ここまでに、同じような事を、ずっと私に言い続けている。もう聞きあきた。だから、言わなくていい」
「……」
「あたしとあんたは、一緒に帰るの。そのための方法を考えなさい。そのためだけに、その世界一の頭を使いなさい。悩んでいる暇があるなら、全力でカッコつけなさい」
「……」
「圧倒的な力を持つ神様に勝って生き残る……それは、他の誰にも出来ない事……けど、あんたなら出来る。これは、あんたにしか出来ない不可能」
ジュリアの言葉が、鎖になって、トウシの体を締め付ける。
トウシの全身を縛り付ける、想いの鎖。
その鎖は、彼女の心と繋がっていて、
少し目を閉じると、トクンと聞こえた。
だから、トウシは、
「最強の神様を倒して……生き残る。これは……ワシにしか出来ん不可能や」
宣言する。
たんなる繰り返しではない。
想いのこもった本気のメッセージ。
覚悟の証。
命の証明。
――そんな、
トウシの全力投球を受けて、
ジュリアは言う。
「あんたみたいなカスが神様に勝てるわけないだろ。ふざけるな」
「おまえ、どうしたいねん!」
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コメント
キャベツ太郎
それで、タナジュペアはいつMー◯グランプリに出場されるんですか?