センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
78話 本音。
78話 本音。
「しつこい男だ。何回、言わせる。私の前で、無様をさらすな」
「ちょっ、暁さん……なにを――」
「なんで、急に、トウシくんにビンタ……」
「今の、メッチャ痛いだろ……」
「うわ……真っ赤……」
訳が分からないという顔をしている面々。
「いまのは、ないよ……暁さん……なんで……」
「ほんと、なんで、トウシくんを殴ったの? 理由をちゃんと言ってくれないと、ここは引けない」
「いまのは……いつもの『毒舌の延長』とは認識できない。どういうつもりなんだ?」
「トウシくんは、俺たちの大事なリーダーなんだ。それを傷つけるのは許さない」
と、ジュリアにつめよりだした面々。
彼・彼女達にとって、トウシは、もはや、なくてはならない精神的支柱。
絶対的な心の支え。
魂のよりどころ。
つまりは、依存対象。
だから傷つけられることは許せない。
今の神話狩りにとって、トウシを失う事は全滅する事とイコール。
ゆえに、そんなトウシを理由もなく殴りつけたジュリアに対して集まる非難の声は大きくなる。
――時間を重ねるにつれて、どんどん苛烈になっていくジュリアを攻める声。
だけれど、ジュリアは、そんな面々の言葉は完全にシカトして、
ひたすらにトウシを睨みつけている。
ジュリアは続けて、
「私の前では、死ぬまでカッコつけ続けろ。出来ないなんて……絶対に言わせない」
まるで、こぼれ出たような、『泡のように脆い重たさ』に包まれた、概念の段階で大きく矛盾している言葉。
そんな『ふざけた言葉』を押しつけられて、
だから、そこで、
トウシは、
ギリっと、
――強く、奥歯をかみしめて、
「うっさいわ! ボケェ! ワシ独りやったら、こんな悩んでへんのじゃ、カスぅ!」
濁流のように、
我慢していたものを、
「ワシ独りやったらなぁ! 最後の最後まで、クールぶっこいて、黙って死んだるんじゃぁあ! ワシはただの厨坊やけどのぉ! その程度のプライドくらいはあるんじゃい!」
吐きだす。
吐血するように、
「お前を守れへんかもしれんから、こない悩んでんねやろぉお!」
ジュリアの目を睨みつけて、まっすぐに、強く、重たく、
「無理に、決まってるやないか! あほんだらぁああ! なんや、さっきの女ぁ! 勝てるか、あんなもん! あれが100万人束になっても傷一つつけられんのが神様なんやとぉ! ふざけんな、ぼけぇええええ! そんなもん、人間のガキが勝てる訳ないやろ、ナメんな、かす、ごらぁあああ!」
トウシは、喉が千切れるほどに、
込みあがってくる想いを、
「ワシは弱いっ……! お前を守り切れるほど強ぉない……せやけど……それは、イヤやから……」
ついには、ボロボロと、
涙をこぼす。
その姿を、誰もが悲痛の面持ちで見つめていた。
ここにいる誰もがトウシの事をスーパーヒーローのように扱っていた。
実際、それだけの力があって、あがめるに値する成果を残してきた。
しかし、トウシは、アメコミのスーパーヒーローじゃない。
しょせんは、ただの、頭がいい中学生でしかない。
中学生に背負い切れるほど、この『無間地獄』は軽くない。
それを、
彼・彼女らは、ようやく思い出す。
だから、誰もが黙りこむ。
何を言えばいいいのかわからない。
そんな中で、トウシは、
「お前を……死なせたぁないから……悩んでんねやろぉ……投げだすことができへんから……苦しんどるんやないか……それやのに――」
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