センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
75話 紙一重。
75話 紙一重。
岡葉は、
ダっと地面を蹴りあげて、一気にミシャとの距離をつめると、
『右手に召喚した剣』を振り上げ、
「うらぁあああああ!」
血走った目でそう叫びながら、振り下ろした。
迷いのない、まっすぐな、力強い一刀。
その剣を、ミシャは、
「主の命だから、投げる気はないけれど……『これ』の相手をしなければいけないというのは……正直、気が滅入るわね……」
ゆるやかに、紙一重のところ、
スっと、半身で、剣を避ける。
「っ……ぃ、一撃じゃ終わらないぞ!」
避けられたからといってひるみはしない。
その程度は想定の範囲内。
岡葉は、体を回転させて剣をブンブン振りまわす。
「くっ! うらぁあ! ぬん!」
けれど、
「……はぁ……はぁ……マジかぁ……全然、あたる気がしない……」
「そのノロすぎる剣には『当たる方が難しい』わね。寝ていても当たるのは難しそう」
「……それが本当だとしたら……ボクじゃ、あなたに対して、何もできそうにないんだけど……」
「当たり前の話をしないように。あなたと私では存在の次元が違うのよ」
「……そ、そうですか……」
絶望のあまり、顔をヒクつかせることしかできない岡葉。
――と、そこで、
「岡葉、さがれ。ワシがやる」
トウシが、トランスフォームをしながら、前に出て、
「ワシの場合でも、殺しはせんって約束してくれるんかな?」
「ええ、もちろん。私からすれば、あなたも、そこの少年も大差ないもの」
「……あんた、そんな高い場所におんの? ……それ、ほんまやったら、お手上げなんやけどなぁ……」
トウシは、ボソっとそう言ってから、
「フルチャージ!!」
全スペックを上昇させるスキルを使い、
全身を躍動させて殴りかかった。
岡葉とは比べ物にならない速度だったが、
「ふぁ~あ」
ミシャは、岡葉を相手にしていた時とさほど変わらない、ゆったりとした動きで、トウシの攻撃をヒラヒラと避ける。
十秒ほど、攻撃を完全回避された事を受けて、
トウシは、
「ちょっ、待ってくれや……ぇ、ホンマに? マジで、このレベル? ウソやろ……」
「サービスタイムはまだ残っているわよ? ほらほら、色々な攻撃を試して、私の対策を考えないと」
「……」
「ちなみに、次のイベント内容だけれど、まず、前哨戦として、30000のガキどもと、あなたたち全員で、ガチンコの携帯ドラゴン戦争をしてもらうわ」
「「「「「……」」」」」
「その戦争に生き残れたら私と闘える……という2部構成よ。どう? 楽しそうでしょう?」
「「「「「「……」」」」」」
「さて、『攻撃を避けるだけ』だと、私の力がよく分からないと思うから、少しだけ、攻撃してみるわね。大丈夫、心配しなくても『寸止め』するから、死にはしないわ」
そう言った直後、ミシャの体がシュンと消えた。
直後、ザラっと音がした。
グニャリと頭部が歪む音が確かに聞こえた。
『頭蓋骨が砕け、同時に、中の脳味噌がひねりつぶされた』と間違いなく理解できた。
(――死――)
脳の深部が、己の死を受理した。
『死んだ』という、完全で絶対的な認識に包まれたトウシ。
しかし、
「……ぇ、あれ?」
トウシは生きていた。
いまだ、死の感覚は心の深部にこびりついているが、
体は死んでいない。
殺されたのは心だけ――
「寸止めをすると言ったはずよ」
気付けば左隣に立っていたミシャが、
その小さな拳を、一度、コツンと、トウシの側頭部にあてて、
「さっきの攻撃が……こうやって、ちゃんと当たっていたら、あなたの頭は爆散していたわ。よかったわね、私が本気じゃなくて」
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