センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
63話 『転』。
63話 『転』。
アダムは、優雅にアクビをしながら、
「貴様程度が私の相手になると思うか? 『この上なく尊い神の王』の側仕えである、この私に、貴様のような虫が――」
「勝てるかどうかなんざ知ったことか! このまま試合を続けたら、間違いなく死ぬ! 5倍にされたら、虹宮の球では通用せんし、こっちのバットはかすりもせん! 終わりじゃ、ぼけぇ! どうせ死ぬなら、その御綺麗(おきれい)な顔面にキズの一つでも残して逝ったらぁ!」
「嘆かわしい。この程度の安い絶望で、こんなにもあっさり切れるとは。『上』も貴様にはガッカリしている様子。もう少し粘り強い人間かと思ったが――」
「知るか、ぼけぇ! おどれらの評価なんざ――」
「残念だが、報酬ランクを一つ下げさせてもらう。まったく、もったいない事をするガキだ。アホウのように切れたりせず、黙って堂々と『この試合』に勝っていれば、『全員脱出』という権利を得られたというのに」
「あー、そー! そりゃ、残念! とでも言うと思ったか、ぼけぇ! どうせただの嘘やろうが! この鬼畜どもがぁ!」
「事実だったんだがな……まあ、どうでもいいか。どっちみち、すでに報酬ランクは下がっている。もう、何をしても戻らない」
「だから、知るかっつってんだ! どっちみち――」
「というわけで、難易度を少し下げる。相手チームの強化はそのままだが、貴様らのチームには『トランスフォームを積んだ携帯ドラゴン』を一つ貸し出す。自由に使え」
それを聞いて、トウシは、
「……ぇ……」
一瞬だけ戸惑ったが、
すぐに、その優秀な頭脳は、
『意味』を理解した。
――だから、
「ひ、ひひ……」
驚異的な演算速度で未来を貫く。
さきほどまで、モノクロだった世界が、驚くほど鮮やかになっている。
――トウシは、突き抜けたような笑顔で、ニタァァっと笑いながら、
「確か……相手チームは、今後、スペック五倍で、かつ、5アウト&常時満塁制が導入されるんやったっけ?」
「ああ」
そこで、トウシは、肩のストレッチをしながら、
「難易度、もうちょっと上げてくれてもええで。10アウト制でもOK。そんかわり、報酬を『最高』に戻してくれ。これ、一生のお願い」
「不可能だ」
「……ちっ……まあええわ。とにかく、『トランスフォームつきの携帯ドラゴン』を一つ貸してくれるんやろ?」
「ああ」
「OK。ほな、さっさと試合再開しよか」
★
貸し出された携帯ドラゴンを受け取ると、トウシは、
「ワシが使うで。文句あるやつおる?」
当然だが、一人もいなかった。
トウシは、迷わずに、
「トランスフォーム」
サクっとドラゴンスーツを身にまとう。
変身完了直後、両手をググっと握りしめながら、
「エルメスを着た時よりは、体がだいぶ重たい感じやな……ウチの子と比べれば、かなり低スペックってこと……まあ、でも……」
ニっと笑い、
「全然、充分」
言いながら、トウシは、虹宮に、
「虹宮。キャッチャーやってくれ。ここからはワシが投げる」
「うん……それはいいんだけど、大丈夫?」
「なにが?」
「トウシくん……バッセンでキャッチャーの練習はしていたみたいだけど、投手の方は……どんな感じなの?」
「野球で一番大事なポジションは間違いなく投手。せやから、当然、ワシも、自分の体を使って『投手の練習方法・成長理論』を一番多く実験をした……あとはわかるな?」
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