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57話 イベント内イベント。


 57話 イベント内イベント。

(……『悩まなくていいところ』……『意味なく足止め』『時間の無駄』……虹宮は、『ナニ』をもってそう判断した? この五つの扉のどれかに、『もっとも早くゴールに辿りつける正解の扉』がある可能性と、『それを示唆するヒント』が周囲に隠されとる可能性……それを一切考慮せんかった理由はなんや……)

 トウシは、思考を加速させる。
 高速で、情報を整理していく。

(パっと見た感じ、ヒントらしきものはない。愚直で楽観的かつ思慮が浅い人間なら、この扉に対して『純粋な運だめしでしかない』と判断しても、そこまでおかしくはない……だが、虹宮は、事前に、『ワシがおらん班は不安やから全員でいきたい』と提案しとる……この点から、虹宮の性格は、『あくまでも、どちらかといえば』の領域ではあるものの、しかし、やはり『慎重な臆病者』と判断できる……けれども、五つの扉に対しては、妙に大胆不敵で猪突猛進……この『ちぐはぐさ』の答えは……穿(うが)ちすぎやろか? ワシも疑心暗鬼に飲まれとる? ……答えは……)


 悩んでいるトウシに、虹宮が、

「で、どうするの、トウシくん。おれは、トウシくんの判断に従うよ」

 その言葉を受けて、トウシは、周囲に視線を配る。
 目を凝らして、何かヒントめいたものはないかと探し、

(ヒントはないな……あったとしても、かなりの時間を必要とする類のものだと推定。どの選択肢がベストか不明な段階……ならば、取るべき手段は――)

 心の中でつぶやいてから、

「ん……じゃあ、真ん中の扉で」

 決断をくだした。
 リーダーとしての判断。
 答えがみえなくとも、結論を出さなければいけない瞬間の対処。
 覚悟と責任。
 重たいだけの邪魔な荷物。


「よし、行こう」


 ★


 真ん中の扉を抜けると、そこは、

「ここ……もしかして、野球のグラウンド?」

 東京ドームに酷似した球場だった。

「おいおい……客席、埋まってんだけど……」

 観客席は、数万を超える中学生で埋まっていた。
 そして、相手側のベンチには、ユニフォームを着て殺気だっている20人の中学生。


 ――と、そこで、アダムが出現し、

「イベント内イベントの発動。見れば分かると思うが、貴様らには、これから野球をやってもらう。対戦相手は、三万人の中から選抜した20人の経験者。全員がリトルやシニアの全国経験者。客席には、『貴様らの敗北』を『心の芯』から願っている熱狂的なサポーター数万。このクソアウェイの中で勝利しなければ、貴様らは全員死ぬ」

「このデスゲーム、難易度が、ほんと、常にマストダイだな……」
「バランス調整、ミスりすぎなんだよ、全体的に……」

「のんきに嘆いている場合じゃねぇぞ! ガチでやべぇ! 俺、小中、ずっとサッカーばっかりで、野球はやったことねぇんだ! おい、この中に、野球できるヤツ、何人いる?!」
「俺もバスケしか、まともにやったことない。野球はルールを知っているくらい」
「パワ〇ロなら、スマホでやったことがあるけど……」
「……『メジャー』と『大きく振りかぶって』なら、アニメで一通り見ているけど……」
「体育の時間にソフトボールをやっただけだな……マジメに取り組んだわけじゃないから、バットの持ち方も微妙」
「小学校の時、ちょっとだけやっていたけど、余裕の補欠だったな」
「ボクは、小3~5まで、運動不足の解消って理由で、親にむりやりやらされたなぁ。やる気ゼロで、練習もテキトーだったから、むろん、ベンチにすら入っていないけれど」
「俺はルールすら知らん」
「私も野球はまったく興味がなくて……」

「ダメだ! こいつら、つかいものにならない! 積んだ!!」

 ガリ勉集団なので、野球に触れた事のある者は非常に少なかった。
 一応、この中には、小学生の時に少年野球をやっていた者が10人ほどいた。
 ただ、真剣に練習していた者はおらず、『お遊び程度にたしなんだ者』か『運動不足の解消として、親からムリヤリやらされていた者』ばかりだった。

 現状を正式に把握したトウシは、真っ青な顔で、

「……『三万の中から選りすぐられた野球エリート20人』VS『カジったコトしかない10人』で対戦……ふ、ふざけとる……」


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