センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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38話 運命の解答。


 38話 運命の解答。

 言い終えると同時、
 トウシは、

「ラプラスキューブ、起動」

 先ほどのガチャで入手したアイテムを使用した。
 それは、フィールドのデータを書き換えるタイプのアイテムで――


「あんた、強すぎて、まともにやっても絶対に勝てんからなぁ……『ここ』を、ワシの得意なフィールドに変えさせてもらう」


 両者を包み込む正方形の断層空間は、突如、数字と記号で溢れかえった。
 まるで、物理学者の頭の中みたいに、
 無数の方程式によって埋め尽くされた、歪に美しい空間。

 ここはトウシの世界。
 彼が、この世で最も輝ける場所。

 全てが明確なデータパッケージになって表示される、情報がうるさすぎる固有領域。


「言うなれば、『ストリートファイト』から『野球』へのシフトやな。『ルール無用』で殴り合うんやなく、『ガチガチに定められたルール』の中での、攻守がハッキリとした、精緻な頭脳戦を強要させてもらう」


 自分をプラグラミングして、戦闘力をデータ化。
 それを、空間系のスキルと組み合わせることで、
 闘いが、格闘ゲームから、SRPGに変動する。

 だが、それは、トウシの『認知』が変化しただけで、
 実際に、現実で行われる事に変わりはない。

「くだらない。しょせんは、データを視覚化させただけ……結局のところ、『互いの肉体を使って殴り合う』という現実に変わりはない。この程度の、ちょっとしたフィールド書き換えで、私と君の戦闘力差が――」

「埋まるんだよなぁ、これが」

 そう言って、トウシは、脳をフル回転させた。

「カオスのオーケストラ。その譜面(ふめん)を解析して、ワシごと調和させる。あんたの呼吸、視線の推移、両手両足の震動、ワシの表在・深部・複合の感覚、反射の精度、肉体の歪み、意識指向の流れ、湿気、気圧――全ての力学的・物理的な指数を掌握して、運命の解答を奪い取る」

「……」

「ここから先、起こること全てが、例外なく、ワシの計算……この空間の全てを演算しつくして、ワシはあんたをねじ伏せる」

 そう言って、トウシは、動いた。
 静かな初動だった。
 荒さは微塵もない。

 非常にゆったりとした静の極致。

 そんなトウシに対して、ジャミは、

「計算だけで運命を支配しようというのか。傲慢だな」

 有無を言わさないスピードで距離を詰めて、

「まさか、本当に出来るなどと思ってはいないだろう?」

 そう言って、ズンと踏み込んで、右の拳を叩きこもうとした。
 ――が、すでに、その段階で、
 トウシは、迷いなくカウンターを合わせに入っていた。

「アウトローのカーブ、どんぴしゃっ……みたいなっ♪」

 スルリと、ジャミの拳の内側に入り込んで、
 右の拳を、ジャミの顎へと叩きこむ!


「ぐぅっ!!」


 ドンピシャでハマったカウンター。
 完璧にかみ合った、会心の一撃。


「っ……く」


 一瞬、フラっとしたジャミは、タンと地面を蹴って、トウシとの距離を取る。
 ズキズキとしている顎を抑え、ギンッと、トウシを睨みつける。

「……まるで、最初から、私が、あのタイミングで右の拳を出すと完全に分かっていたようなカウンターだったな」

「まさに、そのとおり」

「……出来る訳がない……そんなこと……いったい、どんな手品を……」

「どう思おうと自由やけど、現実は変わらへんで」

 そう言って、トウシは、ゆっくりと、ジャミとの距離を詰めていく。
 その頭の中では、同時進行で、膨大な計算が行われている。


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