センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
29話 下がっている頭の数。
29話 下がっている頭の数。
「助けてください。お願いします。死にたくないです」
「てめぇみたいなザコモブの安い頭なんざ見たくねぇ。低能が地面を這いつくばるのは、ただの日常。ただの日常に価値はねぇ。俺が見たいのは、とびきり濃厚な非日常」
そこで、板瀬は周囲を見渡して、
「普段、その破格スペックという威光で周りを傅(かしず)かせているような、こういう尋常じゃなく賢くて、だから当然プライドも高い連中が、俺に媚びへつらう、そんな、『あっちのリアル』じゃありえない非日常が見たいんだ」
その発言を受けて、岡葉が、
「……君……ほんとうに、最低だね」
ボソっとそうつぶやいた。
「最低な事をやっているんだよ。岡葉よぉ……お前、なに、見たまんまを言ってんだ。センスのない野郎だ。倫理観でガチガチになっている日本じゃ、なかなか、『傍若無人』は通せねぇだろ? 言っておくが、俺も、あっちじゃ、お行儀よくやってたんだぜ。そうせざるをえない空気感で満ちていたからなぁ。だが、ここじゃあ、そんな縛りはねぇ。実を言うと、俺は、あの鬼畜な神様に感謝している。溜まったストレスを発散できそうな場所に連れてきてもらえて、心の底から歓喜している」
グリグリと、トウシの頭を強く踏みしめながら、板瀬は、
「さて、下がっている頭の数が足りねぇぞ。こんなカスの頭一つじゃ足りねぇ。俺に全力で媚びてこい。プライドを脱ぎ捨てて、本能のままに、とびきり醜い姿を、この俺様に晒(さら)し尽くせ」
そこで、
「……みんな、頭を下げる必要なんてない。イベント中に、板瀬が何かしようとしても、ボクが止める。心配はいらない」
「かぁっこいい……さすが、岡葉。躊躇なく頭を下げたこのカスとは、やることも言う事も違う。性能から、顔つきから、気概から、もう、全部が全部、すべての質が違う。お前は、俺が今まで見てきた優秀なヤツの中でも頭一つ抜けている」
「褒めてもらえて嬉しいよ。君みたいなヤツからの言葉でも、それが褒め言葉だと、嬉しく感じてしまう。人間というのは、変な生き物だね」
「ただ、人手が7人必要なイベントで、2人が他の事に囚われるってのは、どうなんだろうねぇ。鈴木(ホウマ)たちだけでいけると思うか? 鈴木(ホウマ)も佐藤(ツカム)も雷堂も味崎も優秀だ。蜜波は、詳しくは知らんけど、まあでも、スタート時点を見る限り、おそらく、おそろしく優秀なんだろう。だが、手数が7人必要な『鬼畜神のイベント』を、あいつら5人だけで突破できるかなぁ。ん~?」
「……」
「もし、根性や力技でどうにもならないイベントだったらどうする? たとえば、7人全員の合意が必要な状況になったら? もし、俺一人がちょっと足を引っ張るだけでも終わってしまうようなギリギリのゲームになったら? お前がどうあがいても、俺が邪魔するのを止められないという状況になったら? その場合、どうするんだ? ん~?」
「……」
「さあ、想像力を働かせる時間だ。残り1分……制限時間は刻々と迫ってきているぜ。ちなみに言っておくが、ちゃんと頭を下げて媚びる姿を見せてくれれば、この場での俺は、一応、満足する。ちゃんとイベントで全力を出してやる。別に、死ぬのが最大の目的じゃない。俺は、ただ、『死んでもいい』と覚悟しているだけ。さあ、どうする? その優秀な頭脳をフル回転させて、最適解を導き出せよ」
と、そこで、それまで黙っていたジュリアが、
スっと膝をついて、
「助けてください……お願いします……」
そう言って頭を下げた。
その姿を見て、板瀬は、非常に満足そうな笑みを浮かべて、
「はははははは! お前ら、この女に感謝しろ! この女はお前らの命の恩人だ! こいつは、この中でも、飛び抜けてプライドが高そうなツラをしている。そんな女が頭を下げた。そのことで、今日の俺は、そこそこ満足できた!」
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