センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

17話 俺は正義の味方じゃない。


 17話 俺は正義の味方じゃない。

 リーンの核に触れたことで、己の弱さを飲み込んだゴート。
 吹き荒れるのは、真理を砕く感情の嵐。
 その獰猛で狂気的な『想い』は、無粋な地獄を喰い破る。
 Gバグの『中』を貪(むさぼ)り喰らい、
 想いの象(かたち)を奪い取る。


 ――『狂愛のアリア・ギアス(原初の愛)』、発動――


 深い輝きに飲み込まれて、Gバグは抵抗一つできずに奪われた。
 ゴート・ラムド・セノワールという、
 全てを包み込む『闇』に染められていく。





 ――その光景を、蝉原勇吾は黙って見ていた。





 とてつもなく強大な『漆黒の輝き』が収束しだしたのを確認してから、
 蝉原は、ニっと笑い、

「……かぁっこいぃぃ……」

 そう呟いた。

 ――蝉原の視線の先。
 そこに現れたのは、お姫様だっこでリーンを抱えているゴートだった。
 静かなオーラを纏い、『気を失っているリーン』を優しく抱きしめているゴート。

 その王子様のようなゴートの姿を見た蝉原は、
 ニィっと笑みを強めて、

「やっと、本編のスタート。待ちくたびれたよ」

 静かに、そう声をかけた。
 続けて、

「俺が君を殺したがっている理由。さっき、俺は、それについて、『自分でも特に理由は分かっていない』とか『退屈だったから』とか、色々とふざけた事を口にしたけれど、あんなの全部ウソさ。本当は理解している。ハッキリと。バッチリと。――俺が君を殺さなければいけない理由」

 蝉原は、己の胸に右手をあてて、

「……『完成した君』を殺して、俺は『俺の物語』に最高のフィナーレを飾るんだ。『とてつもなく恰好いい正義の味方』を倒した、宇宙一のヤクザ。俺の物語を締めるために、完成した君の存在はかかせない」

 恍惚とした表情で、イカれた事を口走っている蝉原に、
 ゴートは言う。


「俺は正義の味方じゃない」


 その発言を受けた蝉原は、ゴートの目をジっと見つめ、

「君がどう思うかはどうでもいいよ。『俺が君をどう認識しているか』という、それだけの話だから」

「不愉快なんだよ。俺は正義が嫌いだ。俺は『俺が守りたいと思うもの』を守るだけだ。そんな俺の本気の想いを、『正義』なんていう『おためごかし』に置換されるのは我慢できない」

「面倒臭い男だね」

 蝉原は、やれやれと、首を左右に振ってから、

「俺は、自分のことを、なかなか面倒臭い男だと認識しているけれど、君には負けるよ」

「同感だ。俺に勝てる面倒臭い奴はいないだろう」

 言いながら、ゴートは、リーンをゆっくりと降ろし、
 彼女に対して『いくつかの防御魔法』を施してから、蝉原と向き合う。

「安心していいよ。もう、その子に興味はない。君は、全ての絶望を飲み込んで、『俺が倒すべきラスボス』として完成してくれた。あとは、終わらせるだけだ」

「俺はまだ終わらない。俺には、やるべき事がある」

「やるべきこと……ね。ちなみに、それは何かな? 聞いておきたいね」

 蝉原の質問に、
 ゴートは迷いも逡巡もなく、
 堂々と、
 恥ずかしげもなく、


「世界を救う」


 そう言い切った。

 蝉原は嗤う。
 心底から嬉しそうに、


「くく……やっぱり、正義の味方じゃないか」


 その言葉を最後に、
 粉塵が舞い、
 蝉原とゴートは互いをぶつけう。

 極限を超えた先で踊る両者。
 膨れ上がったオーラは、互いを加速させていく。

 とまらない。
 膨れ上がり続ける。
 魂魄の螺旋階段。

「最高だ! センくん! 君は俺を超えた! これほどの力を持った俺を! 君はこえたんだ! すごいよ! 本当にエクセレントとしか言いようがない! 既に君は終わったのに! 間違いなく死んだのに! しかし、なぜだか君は終わらなかった! 1ミリも理解できない『妙なシステム』を使ってGバグを奪った! ああ! 認める! 君は、最高だ! そのワケわかんない強さ! 君は、確実に、俺よりも強い!」

「妙なシステムとか言うんじゃねぇ……これは、純粋な愛だ……惚れた女を守るためなら何でもする……それだけの事だ」

「気持ち悪いね! 吐きそうだ! けど、まあ、別にいい! 『君を完成させたルート』について、とやかく言うつもりはない! どうでもいい! とにかく、これで、俺の物語は完成する! さあ、コスモゾーンよ! 美しく飾ろう! 最後の5分だ!!」

 叫ぶと、蝉原の全身が赤いオーラに包まれた。
 膨れ上がったオーラ。

 ――絶死のアリア・ギアス発動――


コメント

  • キャベツ太郎

    現時点でも狂ったような数値の蝉原が絶死(5分)を掛けたら本当だったら勝ち目ないと思うけど、D型って気のせいかも知れないけど数値とか戦闘力とかだけじゃなく変態的な精神力もオリジナルと似てきている気がするからもしかしたらもしかするかも知れない

    0
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品