センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

5話 脳筋剣戟。


 5話 脳筋剣戟。


「黙っていろ、リーン・サクリファイス・ゾーン。お前と話はしていない。俺はラムドと話をしているのだ」



 ガイリューの恫喝に対し、
 ゴートが不快気な顔を示し、

「リーンは魔王国のトップ。南大陸の頂点。全魔人・全進化種の象徴。絶対的トップの女王陛下だ。陛下に、ナメた口をきくな、ガイリュー」

「俺の上には誰もいない。俺が王だ。最も強く、最も気高く、最も高潔で、最も偉大な王。それが、この俺……ガイリュー・カリだ」

「もっとも強い王……ねぇ」

 そこで、ゴートは、
 チラと、リーンに視線を向けて、

「リーン、女王として、ガイリューと闘え」

「……ぇ」

「魔王国のトップとして、他国の王に一騎打ちを挑み、見事、配下に加えてみせろ。これは、お前の仕事だ。もし出来なければ、俺は、ガイリューを殺し、この国の民を奴隷として使う」

「……」

「俺はお前に『世界をプレゼントしてやる』とは言ったが、『お姫様をしていればいい』とは言っていない。お前は『お花畑でお昼寝をするお姫様』ではなく、『イバラの上で踊る女王』だ。世界のトップに立つ者。全てを手に入れる者。その覚悟と自覚を忘れさせないためにも、『女王』として『リーン・サクリファイス・ゾーンがやるべき仕事』は必ずやらせる。ここで逃げるなら、俺はお前に、二度と手を貸さない」

「……」

 リーンは、一度目を閉じて、

「はぁ……」

 深い溜息をついてから立ち上がり、
 アイテムボックスから、身の丈ほどある巨大な剣を取り出すと、
 その切っ先を、ガイリューに向け、

「ぬしを倒さないと、ぬしの命が消え、ぬしの国の民がラムドに使い潰されてしまう。この男は、この手の冗談を口にしない。やると言った事はやる」

「俺のことが、ずいぶんと理解できてきたな、リーン」

 背中に、ゴートの言葉を浴びながら、
 リーンは続けて言う。


「北との戦争に備え……南大陸をまとめ上げ、一枚岩にする。そのために、女王として、隣国の王に武を示す。……確かに、ワシの仕事だ」

「たかが鬼の魔人が……龍の進化種である俺に勝てると思っているのか?」


 オーラを充満させながら、
 ドスのきいた声で、

「いいか、俺は、この国を愛している。この国だけが俺のすべて。俺の望みは『この国の王』。それだけ。それ以外はいらない。だから、今まで、お前らには干渉しなかった。しかし、その気になれば、俺は世界を支配できる。それだけの力が俺にはある」

 言いながら、ガイリューは、全身に魔力を充満させていく。
 体毛の色が変化し、体が膨らみ、鱗が逆立つ。

「ラムド・セノワール、そして、リーン・サクリファイス・ゾーン。貴様らは、眠っている龍を起こした。己の過ちを嘆き後悔しながら死ぬがいい!」

 変身したガイリューの姿を見たリーンは、

「変身型か……随分と珍しい特性を持っているな」

 『進化種の変身型』は、『魔人の変身型』と比べれば、
 そこまで珍しいというほどではないが、それでも数は少ない。


 襲いかかってきたガイリューを、リーンは、正面から迎え撃つ。
 闘牛士のようにサラリといなしたり、華麗なカウンターを入れたり――というのは趣味じゃない。

 ギィン!

 と、力強く響く、金属の反発しあう音。
 ド直球の剣戟。
 リーンは、脳筋一直線に、ただただ、そのクソでかい剣を振り回し続ける。

 そのあまりの豪快さに、ガイリューは、

「……ぬぅ」

 すぐに押され始めて、グラリとひるむ。
 腕が痺れる。
 リーンの一撃を受け止めるたび、ビリっとした強い痺れが脳天まで響く。


 魔王リーン・サクリファイス・ゾーン。
 『脳筋お花畑のバカ魔王』と揶揄(やゆ)されている彼女だが、
 その実力は、勇者に次ぐ世界二位。
 事実、これまで、大量の魔人・進化種を統治してきた稀代の女王。


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