センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
57話 異常極まりないオーパーツ。
57話 異常極まりないオーパーツ。
そんなピーツの姿を見て、カティとバロールの二人は、目を合わせ、
両者ともに、ニっと微笑んでから、
「主を彷彿とさせるという点からいえば、こいつがソレである可能性はなくもないわね」
「だが、そんなことを言い出したら、『腹の底から勇気を出したヤツ』や『守りたい誰かを持つ者』の『全員』がもれなく容疑者ってことになっちまう」
「そうなっちゃ、おしまいってヤツね」
「というより、前提的に、『守りたい誰かのために命を張れるヤツ』は、はたして、俺たちの敵なのかって問題が出てくるだろ」
「そうね……私たちの討伐対象は、あくまでも『巨悪』。『迷惑なエゴを満たすためだけに暴れるクズ』の排除こそが命題」
バロールはそう言ってから、ピーツに視線を移し、
「少年、一つ質問だ。『D型』という言葉を聞いて、何か思いつく事はあるか?」
急な質問に対し、
ピーツは動揺して、
「でぃ、でぃーがた? 『ディーガタ』……でぃーが……ぃ、いや……し、知らんけど……」
そう言ったピーツの目をジっと見つめてから、カティは、
「嘘をついているんだとしたら、凄まじい演技派」
「つまり、こいつは『世界を狙える役者』か、もしくは『何も知らない一般人』ってことか」
バロールの言葉を聞くと、
カティは鼻で笑ってから、
「その『学校に隠されていた秘密のアイテム』ってやつ、だいぶ問題じゃない?」
「……『一般人』が使っても『存在値2000級の力が出せるアイテム』……確かに異質。調べる必要がある」
「他にもまだあるようなら、キッチリ回収しないと」
「そうだな。そんな異常極まりないオーパーツは、『無駄な争い』を産む火種にしかならないと断言できる」
そこで、ピーツに背を向ける二人。
その背中に、ピーツは、
「ちょ、待っ――」
慌てて二人を止めようとするピーツに、
バロールが、
「お前、稀に見る逸材だな」
「……へ?」
間抜けな疑問符を飛ばすピーツに、
続けて、カティが、
「頑張ったら、いつか、神の王にもなれるかもね」
「……」
ただただ困惑しているピーツの視線の先で、
バロールが渋い顔で、カティに視線を向けて、
「いや、それは流石に――」
「軽いジョーク。本気で言っているワケないだろ。いちいち、過剰反応すんな」
「……このアマ……」
そこで、カティは、
ピーツの目をジっと見つめて、
「われわれはゼノリカ。全てを包み込む光」
続けて、バロールが、
「望むなら、迎え入れよう。お前にはその価値がある」
「その資質、決して無駄にしないように」
「「我々は、世の不条理を裂く刃。たとえ、この世の全てが闇に染まろうと、最後の最後まで合理を叫び続ける世界の後光。『この上なく尊い神』を胸に抱く天上の調律者」」
「……」
「そう遠くない将来、この世界はゼノリカに包まれる」
「その時は、門戸を叩くといい。貴様の名は下に伝えておく」
「いや、あの……さっきから、ぜんぜん、意味がわから――」
「さきほどの脅しは、すべてジョークだ。ゼノリカに属する私達が『不条理な殺生』に手を染める事など絶対にありえない。だから、心配する必要は何もない」
「そういうこと」
そう言って、二人は瞬間移動で、この場から去っていった。
強大なオーラの余韻だけが世界に拡散していく。
浸透していく余波が、時間の経過によって、わずかに緩んだ時、
残されたピーツは、
(ゼノ……リカ……)
心の中で、
(その単語……どっかで聞いたことがあるような……なんだっけ……んー、あ、そうだ……ガキの頃に考えたカッコイイ言葉の一つだ……は、はは、なんだ、この変な偶然……)
ブツブツ言いながら、ペタンと尻餅をついて、
(なんだろう……あいつら……悪いやつらじゃないような……)
あくまでも感覚の話。
だから、確実ではない。
けれど、
(なんか、よーわからんけど……とりあえず)
そこで、大の字になって、
「しんどー、ありゃ相手にできねぇわ」
深いため息をつきながら、そうつぶやいた。
そんなピーツの鼻を、まるでねぎらうように、いまだステルス状態の携帯ドラゴンがペロっとなめた。
(あれほどの連中がその気になったら、すぐに、『隠されているアイテム』は全部回収されちまうだろうなぁ……トランスフォームの魔カード……仮にあったとしても、あいつらに没収されること確定だなぁ……はぁ……)
何度目か分からない溜息をついてから、
(でもまあ、携帯ドラゴンは、今も俺のものだし、こいつを持っているって事もバレずにすんだ……ここから世界がどうなっていくか知らんけど……切札は隠しておくにこしたことはない……『切札を使う時は、他の切札がある時だけにしろ』って、じっちゃんか、ばっちゃんか、どっかのマンガのキャラが言っていたような気がするからな)
心の中で、ぶつぶつと、
(さて、ちょっと色々と一気に起こり過ぎの『俺の異世界転生』は、はたして、ここからどうなっていくんだろうねぇ……いろいろ不安だし、もろもろヤバそうだけど……けど……まあ……)
ニっと微笑んで、
「ひゃっほい!」
ワクワクを叫んだ。
こうして、ゼノリカに触れつつ、二次試験に進む事になったP型センエース2号。
そんな彼の明日はどっちだ!
コメント