センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
56話 P型『センエース』2号。
56話 P型『センエース』2号。
「もちろん、答える気はありますよ、もちろん、ええ、もちろん! 敵対する気とかゼロ! 本当にゼロ! まだ死にたくない!」
「なら、さっさとまとめて簡潔に喋れ」
「われわれはヒマじゃないの」
「……えっと……実際のところ、『ウチの学校に隠されていた秘密のアイテム』を使ったら、すごい力が出せたというだけで……だから、詳しい事はよくわからなくて……」
「アイテム? どんな?」
「魔カードでして……使うと、変身できて……古龍も一発で倒せる力が出せまして……でも、使い切りで、それはもうなくて……だから、証明とかは出来なくて……」
そこで、バロールが、カティに意識を向けて、
「どう思う?」
「ウソをついてはいない。けど、真実を包み隠さず喋っているという印象は抱かない」
「同意見だな」
「えぇえ! いや、ちょっと待って! ウソ言ってない! 何も隠してない! 俺は全部、ちゃんと喋った! さっきまで一緒にいたやつに確認をとってくれても構わない! もはや、こうなったら、逆に調べてほしい! さっきまで、俺と一緒にいたヤツは……ぁ、えっと、あの……」
そこで、口ごもるピーツ。
そんなピーツに、
「ん? なんだ? 言いたい事があるなら言え」
「……えっと、仮に、ここで、『誰々という人が証言してくれます』って言って……で、あなたたちが、その『誰々』から話を聞く時に、拷問とか、調べ終わったら殺すとか……そう言う事はしないって約束してくれます?」
「……」
そこで、バロールは、一瞬だけ考えて、
「いや、殺す。危険分子はわずかであっても排除する。もし、お前が、ここで何も喋らなくとも結果は同じ。調べて、見つけ出して、情報を奪ってから殺す。われわれは正義の集団というわけではない。むしろ逆。『この上なき巨悪』を望む闇の秘密結社」
「……」
「だが、お前が、正直に吐くのであれば、お前だけは生かしてやるよ。面倒が減るのは歓迎だからな。つまり、これは取引。どっちか選べ。関係者全員死ぬか、お前だけは生き残るか」
そこで、カティが、
「よかったわね。選択肢をもらえて。実質、一択。というわけで、さっさと、答えて――」
と、そこで、
ピーツは、立ちあがり、ナイフを抜いて構えた。
その姿を見て、バロールは尋ねる。
「……少年、なんのつもりだ?」
「あんたごときが、私達に勝てると思う?」
「勝てない。殺される。あんたらは強い。雰囲気で分かる。ケタ違いに強い。成績最下位の俺がどうこう出来る相手じゃない。間違いなく、俺は死ぬ。そんな事は知っている。俺は賢くないが、バカじゃない」
「なら、なぜナイフを構える?」
「知らねぇよ。逆に教えてくれ。俺はなんで……」
そこで、ブルブルと震えながら、
わずかに、涙をこぼしながら、
「なんで、俺は今、あんたらに逆らおうとしているんだ?」
「「……」」
「……『逃げていい』って許しがほしい。『腐ってもいい』って免罪符だけが『今の俺』が望む唯一の証書……」
恐怖におびえながら、
顔を歪ませながら、
それでも、ナイフを握る手だけは力強い。
「「……」」
そんなピーツをジっと見つめるバロールとカティ。
二人の、必死で『見極めん』としている視線の先で、
ピーツは続けて、
「……俺は別に善人じゃない……高潔なヒーローってワケでもない……けど……でも……」
そこで、ピーツは、グっと奥歯をかみしめて、
「それでも……きっと、譲れないものがあるから……」
キっと顔をあげる。
芯がグワっと熱くなる。
まっすぐな目で、バロールとカティを睨むピーツ。
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