センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
25話 誰も薄毛の心配はしてねぇ。
25話 誰も薄毛の心配はしてねぇ。
と、そこで、
「お前ほどの力を召喚して……完全に、俺はヤバいと思うんだが……今のところ、なんともないんだよなぁ……」
ピーツは尋ねる。
「なあ、教えてくれ。どうなってんだ? 俺は、既に魂魄を捧げたから、消えるんじゃねぇの? なぁ、そこんとこ、どうなの?」
その問いかけを受けて、
携帯ドラゴンは、クルっと背中を向けた。
ペカーっと映し出されるエアウィンドウには、
『携帯ドラゴンのデータ移動程度で完全消耗するほど、センエースの魂魄は矮小ではありません。たとえ、超極少とはいえ』
と表示されていた。
「……ワケわからん……お前、俺のナニ知ってんねん。そして、一文の中で矛盾してんぞ。矮小ではないけど、超極少? はぁ? ウチの携帯ドラゴンのウェルニッケ野に障害が起きてる件。――てか、お前が全部ささげる必要があるっつったんじゃねぇか。あと、今の俺は閃壱番じゃなく、ピーツなんだけど……もう、ツッコミところが多すぎて、俺のセリフが渋滞しているじゃねぇか。この有様、どうしてくれる」
溜息をつきつつ、そう呟いた、その時、
ゴゴゴっと、扉が開くような音が聞こえて、
背後に、来た時と同じ、淡い光の道が出現した。
「……なんか、帰れるっぽいな……全体的に、なんのこっちゃ、さっぱりわからんけど……まあ、いいや。ピンチは去って、強力な味方を得た。その情報だけ処理できれば、今のところは充分……というわけで、とりあえず――」
そこで、ピーツは、携帯ドラゴンの頭の首裏を掴み、自分の頭部に乗せて、
「これからよろしくな」
「きゅい」
嬉しそうに返事をする携帯ドラゴンを頭に乗せたまま、
ピーツは光の道を進んだ。
★
扉の外に出ると、
そこでは、まだ、暗号解除の方法を熱心に探しているボーレがいた。
一心不乱に壁をなぞったり、床を踏みしめたりしている。
「集中力はすごいな……その全部を勉強に使っていれば……」
呟きながら、
ピーツは、
ボーレの肩をたたいて、
「ん、どうした、後輩? 何か見つかったか?」
「疲れたから、俺、もう帰る」
「あん……なにを軟弱な……まだ探索開始から一時間も経っていないぞ。せめて、あと五時間は暗号解析に使うべきだと――」
「勝手にやってくれ。俺は帰る。マジで疲れた」
「根性なしめ……」
「あぁん? 『根性しかない』と言われた事がある俺様を相手に、なんと失礼な」
不満そうな顔を浮かべてから、
ピーツは、ボーレに言う。
「ところで、先輩。これ、見えるか?」
そう言って、自分の頭の上に乗っている携帯ドラゴンを指さすピーツ。
「これ? ん? 髪の毛ならちゃんとあるぞ、心配するな」
「誰も薄毛の心配はしてねぇ」
と、一旦、言葉を置いてから、
「……ふむ」
と、呟いて、
心の中で、携帯ドラゴンに、一瞬だけステルスを解除するように指示を出す。
すると、ボーレが、
「ん?」
一瞬だけ姿を見せた携帯ドラゴンを視認して、
「……今、何か……」
だが、すぐに姿を消したので、
「きのせいか……? 妙にでかくて丸っこいトカゲみたいなのが、一瞬、見えたような……」
目をコシコシしながらそう言うボーレに、
ピーツは、フラットな顔で、シレっと、
「きのせいだ。どうやら、俺だけじゃなく、先輩も相当疲れている様子。今日は帰って休んだ方がいいんじゃないか?」
「んー、そうした方がいいのは分かっているんだが……今は、こうして、現実から全力で逃避していたい……明日の事は考えたくない。今日と言う日が永遠に続いてほしい」
「……『明日に怯える日』が永遠に続く事を望むとは……特殊なマゾだな」
「ああ、明日が恐い……寝ている間に、明日の『龍試』が終わっていて、なんだか良く分からないけど、合格していました………という展開になればいいのに」
「そんな都合のいい展開が起きてたまるか……って、ん? 龍試って明日あるのか?」
「そうですが、なにか?」
「……ボーレ先輩……あんた、試験の前日にも関わらず、先の見えない暗号解読を、ここから五時間かけてやるつもりだったのか?」
「なにを当たり前のことを」
「……い、イカれてやがる……圧倒的キチ○イ……」
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
37
-
-
36
-
-
17
-
-
22804
-
-
337
-
-
-
3431
-
-
-
6
-
-
0
-
-
3395
コメント