センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

3話 上からの命令。


 3話 上からの命令。

 ――寝室を後にしたゴートが、後ろ手に扉をしめたところで、
 右斜め前にある柱の影から、一人の女がヌゥっと現れて、

「上からの命令を伝える」

 たんたんと、事務的に、

「あんたとフーマーの上層部を繋ぐ道をつくった。まもなく、接触してくるだろう。内側から世界をコントロールし、頃合いをみて、黒幕として大暴れせよ。以上」

 命令を受けると、ゴートは、
 少し大げさに、恭(うやうや)しさを演出しながら、

「アイ、マァム」

 と、返事をしつつ、

(予定通りの展開……俺は、このまま、エレガの思惑通り、世界を乱す歯車になる……その中で、うまく、上に、俺の有能性をアピールして、天国に近づく……)

 ゴート・ラムド・セノワールの道は非常に単純。
 ゼノリカの思惑に乗っかりながら、エレガに近づく道を模索する。

 ※ ゴートの中における『ゼノリカ』は、エレガによって騙されている組織。『世界を乱すラムド』という『悪』を作る為だけに利用されている可哀そうな組織。
 ゼノリカは、エレガのオモチャだが、しかし、ゼノリカに属する者は、騙されているだけで、悪に分類される者たちではなく、真剣に高次の合理を追求している気高い連中。だから、ゴートは、ゼノリカを解放するためにも、エレガの暗殺を求めている。


(エレガを暗殺し、UV1を……ゼノリカを解放し、俺の下につける。バロールも、その上の連中も、みんな俺が面倒をみてやる。俺が、本物のセンエースになるんだ……)


 ――ゴートが決意をあらたにしていると、
 そこで、UV1が、


「バロール猊下は、あんたに対し、『この世界に、理知的な混沌をもたらせ』と命じられた。あんたは、与えられた役割を忠実に果たしていると思う」

 そこまでは、たんたんとそう言ったが、そこで口をモニョモニョとさせた。

 ゴートが、

「……?」

 ハテナ顔を浮かべて、UV1の目を見た。
 『どういったものか』という顔をしているUV1は、
 そこからも、また、少しだけ迷ってから、ゆっくりと口を開く。

「……だけれど、リーンを、あそこまで『たらしこめ』とは誰も言っていないのだけれど?」

 そんな事を言ってきた。
 『UV1の言いたい事』を正確に把握したゴートは、少しだけ目を泳がせて、

「もっとも効率的な手段をとっているだけです」

 と言いながら、頭の中では、

(惚れた女を抱いているだけです……とは言えんわな。まあ、でも、別に問題はない。俺とリーンの戦争は、しょせん、マッチポンプ。『外』に向けての『その辺』は、テキトーにうまくやるさ)

 悪になったゴートと、それに対抗するリーン。
 世界を巻き込んだ大問題の解決による進化。

 そんなものは起こらない。

 そこに至る前に、エレガがフッキを発動させる。
 つまり、

(……結局のところ、大事な命題は、フッキの停止。そこさえ達成できれば、あとは、どうとでもなる。というか、俺がどうにかする。全部、きちんと、うまくやってやる)

 錯綜する思惑と、不確定な感情。
 全てが複雑に絡み合って出来あがった一本の糸。

 だが、複雑に絡まり過ぎて、結果的には、単純なヒモになった。

(ようするに、俺が要ってことだ。必ず全部達成してやる。そして、世界を救ってみせる。ヒーローになってみせる)


 ――ゴートの言い訳を聞いたUV1は、溜息交じりに言う。

「……効率的な手段ねぇ……まあ、いい。あんたには在る程度の自由が許されている。好きにすればいい。……ただし、いつも、私に視られているという事を忘れるな」

 そう言って、UV1は、影に帰っていった。

(もちろん、忘れていない。だが、今の俺なら、あなたの目を回避する手段はいくらでも――ん)

 ちょうど、それと同じタイミングで、

「テプ0時をすぎたよぉ!」

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