センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
61話 ピースメイカーの三人。
61話 ピースメイカーの三人。
第二使徒ケイレーンの命令を受けて出動したのは、フーマーが誇る最高位の実行部隊『ピースメイカー』に属している3名。
存在値80オーバーの超人『10名』で構成されているピースメイカーは、間違いなく人類最強の部隊であり、彼らがその気になれば、フーマー以外の国全てを落とすのに一週間かからない。
ピースメイカーは、あまりに強大すぎるため、基本的には、ほとんど出番はない過剰戦力。
かりに、『何か』が起きて出動する事があっても一人か二人が精々。
だが、今回、そんなピースメイカーから3名も派遣されていた。
「――それだけ、上は、『レイモンド』とかいうその企業を警戒しているということだな。おもしれぇ」
陰にまぎれてレイモンドを観察している女が3人。
一人は筋肉質で、一人は細身で、一人は小柄。
「パルシュ、分かっていると思うけど、絶対に無茶はしないで。今回はあくまでも威力偵察。少しでもヤバそうだったら即撤退」
口うるさいセレーナに、
「わかってる、わかってる」
パルシュは、鬱陶しそうに手をふりながら答える。
それに続くように、もう一人の女――ユーイが、
「でも、いけそうだったら、皆殺しにしてもいいんだよね?」
乏しい表情かつ平坦な口調でそう問いかけると、
「ユーイ、ちゃんと聞いてなかったの? レイモンドのドーラは、私たちよりも強いのよ」
呆れた口調でそう答えるセレーナに、ユーイは少しだけムっとした顔になって、
「だから、いけそうだったらと言っている。私達より強いからって殺せないわけじゃない。私達がその気になったら勇者だって殺せる」
「わたしら3人だけで勇者をやるとなると、『とんでもない損傷』は覚悟しねぇといけねぇけどな」
「ドーラだけじゃなく、その手下にも、たくさん、強いのはいるのよ。今回、私達に課せられたミッションは、『レイモンドの底』をはかること。殲滅作戦は、情報を集め、準備を整えてから全員で行われるって、ちゃんと――」
「わかってる、わかってる! みなまで言うな!」
「セレーナ、うるさすぎ」
「……はぁあ」
溜息をついたセレーナの向こうで、パルシュとユーイの二人は、意気揚々と、レイモンド本社に接近していく。
「とくに、罠的なモンはねぇな」
「ん、あったよ。ショボイのがいくつか。わたしが解除しながら進んでいるだけ」
「マジかよ、やるな、ユーイ。産まれて初めて他人を尊敬したぜ」
「ありがと。ちなみに、パルシュの『産まれて初めて他人を尊敬した』ってセリフを、わたしは、もう100万回は聞いているんだけど、その件についてはどう思う?」
「お前はわたしをどんなキャラに仕立て上げるつもりだよ。確かに、これまでにも、何度か言った事がある気もしないではないが、100万回は言ってねぇ」
「何回も言っている自覚はあったんだ……なら、やめればいいのに」
「パルシュ、ユーイ。二人とも、もう、中に入るんだから、静かに」
などと軽口をかわしあいながら、三名は、レイモンドの本社に潜入する。
三人が忍びこんだレイモンドの本社は、いっけん、『どこにでもある魔カード関連の会社』だった。
だが、そのあまりに『普通すぎる』という異質を、ユーイは敏感に感じ取る。
「……ぁ、これヤバいやつだ」
乏しい表情で、ボソっとそうつぶやくユーイ。
ユーイの感覚の鋭さを理解しているセレーナとパルシュは、顔を見合わせてから、
「「……どのくらい?」」
おそるおそる、ユーイに尋ねると、
「もう、遅いくらい……」
ユーイがそう呟くと、二人は顔を青くして、
『いったん、退避しよう』――と、考えたが、しかし、時すでに遅し。
グニャリと視界が歪んで、
「どうわっ! 転移かっ!」
「ユーイ、解除して!」
「……だから、もう遅い――」
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