センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
35話 レイモンドは、敵か味方か。
バチバチしているケイレーンとドーラ(ミシャ)の会話に対し、
周囲にいる他の王族や冒険者たちは全力で聞き耳をたてている。
特に必死なのは、『トーンの首席』であり『今大会の主催者』であるカバノンだった。
カバノンは、あの日以来、打倒魔王国に腐心しており、そのために出来る事は全てやるという燃えるような気概を迸らせて日々を生きている。
そんな彼だからこそ、レイモンドに対して最も慎重になっていた。
(レイモンドは魔王国の敵か味方か……)
レイモンドがフーマーに対してケンカを売っている事は知っている。
とても褒められた行動ではないが、しかし、その大胆不敵さは、『大きな可能性』を感じさせるものでもあった。
フーマーにケンカを売るということは、『フーマーの庇護化になくともやっていけるという自信のあらわれ』かもしれない。
『たんなる勘違い』だったなら目もあてられないが、レイモンドは『ランク5の魔カード量産』という離れ業を成した連中。
ゆえに、
(((((あるいは――)))))
と、各国の代表達は考える。
((((もし、『フーマーから独立してもやっていけるだけの力』があるとすれば……))))
別に、みな、『フーマーの庇護化にある事』が嫌で嫌で仕方がないというワケではない。
フーマーの下でいた方が、色々と有益なのは事実だから。
だが、『反抗期の子供』のような、『自分だけでやっていきたい』と願う気持ちがないわけではない。
『親(フーマー)』の命令を聞かなくてもすむのなら、それにこした事はない、とも考えてしまう、人として当然の感情。
各国の代表は、『フーマーからの独立が可能な力』の程度――その可能性の質について吟味しようとしている。
レイモンドの自信が本物であるなら、自分達にも、可能性はあるのではないか、などと甘い夢を見ながら。
――それに付随して、トーンの主席『カバノン』は、
(その力が……人類側なのか、モンスター側なのか……)
その判断をつけようと必死になっている。
セファイルに属しているというだけでは判断材料たりえない。
(ぜひ人類側であってもらいたいものだ……ランク5の魔カードを量産できる力はあまりにも大きな脅威……)
この仮面武道会中に判断をつけたいと考え、カバノンは、必死に、ケイレーンとドーラの会話に聞き耳をたてていた。
¬¬★
最終予選『250番~300番までの闘い』が始まるまであと数分。
『初戦』から『この最終予選』が始まるまでに空いていた時間は2時間ほど。
そのほとんどを使って精神を集中させたバロールとジャミの準備は万端だった。
ビリビリとした静寂のオーラを纏い、五名の第三勢力と向き合う。
(やはり、彼女達はハンパではない。五聖命王の御方々に近い圧迫感。私の目では見通しきれないため、実際のところ、イマイチ、よくわからないが……とにかく、とんでもない威圧感を感じる)
(ああ……マジで、殿下たちと対峙した時と近しい圧力……時々『本人なんじゃね?』と思ってしまうほど、ベクトルだけは似ている。まあ、コアオーラから別次元の邪悪さを感じるから、確定で別人だが)
(あの五人の女たちは、『明らかな闇』を内包している……あの深き闇は、われらゼノリカとは対極にある『黒き穢れ』……)
バロールとジャミはギャグ漫画世界の住人ではない。
ちょっと仮面で顔を隠されたからといって、それだけで『知り合いを別人だと思う』なんてことはない。
現在、彼女達が身につけている仮面『ペルソナX』は、センお手製のランク1000を超える変装用の究極超神器。
つまり、バロールとジャミの二人は、『仮面をつけたぐらいで知人が識別できなくなるマヌケ』ではなく、むしろ逆で『識別など絶対にできるはずないのに、似た圧を感じ取ってしまうほどのケタ違いな洞察力を持つ超人』なのだ。
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