センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
21話 ウルトラバイオレット009。
21話 ウルトラバイオレット009。
レイモンドの本社に潜り込んだモナルッポとキッツ。
モナルッポは、潜伏スキルが得意というワケではないが、勇者同様、オールラウンダーの天才型であるため、その気になれば、どんなことでも、ある程度以上のレベルでこなせる。
不可視化の魔法を使い、気配を殺し、影に潜み、レイモンドの内情を探る二人。
もぐりこんだレイモンドの本社は、なんというか、『どこにでもある魔カード関連の会社』といった感じで、特におかしな所は見当たらなかった。
経理部も人事部も業務部も製造部も総務部も、一つの空間でごっちゃになって、右へ左へと書類と人が飛び交っている。
普通だった。
あまりにも普通すぎたともいえる。
(なにか、ヤバい気配を感じる……なにがどうとはいえない……これは、本能の警告……)
モナルッポの判断ははやかった。
調査を開始してすぐだったが、逃走を決断し、キッツに指示を出す。
だが、
「っ……モナ様。転移の魔カードが使用出来ない状況になっております」
「なに? 次元ロック対策に不備はないと言っていただろう」
「……つまり、そういうことです」
「っ……想像していたよりもヤバい場所だったか……」
しかたなく、その足で帰ろうとした――が、遅かった。
逃げようと踵を返したところで、グニャリと視界が歪んだ。
(転移の魔法っっ!! 完全にターゲットされている……逃げられっ――)
抵抗むなしく、どこかへと運ばれる二人。
気がつくと、二人は、無数の死体の山の前に立っていた。
そして、その死体の上で、優雅にあぐらをかいている男が一人。
「やあ」
気軽にそう声をかけてきた男は、黒いコートに身を包む、病的に線の細い男だった。
「私は、ゼノリカの天下、百済を染める闇が一つ、コードネームはウルトラバイオレット009。よろしく、どうぞ」
UV9の挨拶を聞いたモナルッポとキッツは、ともに、冷や汗を流し、
「……し、しんじられない……強さ……」
「ば、ばけものっ……」
ワナワナと震えていた。
UV9の存在値は余裕で200を超えている。
モナルッポたちからすれば、神の領域。
目の前にいる存在が、ただ神のように強いだけだったら、ここまでおびえたりはしなかった。
問題なのは、その『神の領域』にある『異質極まりない存在』が、無数の死体の山の上に座しているという事。
その死体の中には、赤子や幼子も混じっていた。
屈強な戦士の死体が積まれていただけであれば、まだ、戦争・闘争の果てを予測する事ができた。
が、そうではない。
老若男女関係なく……それも、全ての死体に、明らかな拷問の跡があった。
腕を引き千切られた死体があった。
顔が焼けただれている死体があった。
自身の臓器でしめつけられている死体があった。
バラバラにされ、グチャグチャにすりつぶされ、引きずり出された眼球が無造作に転がっている……
見るだけ出吐き気がするような奇形の死体が山ほどあったんだ。
「おま……あなたは……まさか……レイモンドの……」
言葉を慎重に選ぶモナルッポ。
こんな状況でも、頭の奥では冷静だった。
それが本質というワケではない。
『冷静に対処しなければならない』と魂が叫んだから――
モナルッポの問いに、UV9は、
「もしかして、こう聞きたいのかな? 私がレイモンドのCEOか、と。もし、そうならば、こう答えるよ。この組織のトップは、私ごときではお会いする事もできない、この世で最も尊き御方だと」
その発言を聞いて、モナルッポは即座に、
(……ウソだな、こいつより上の存在などいるはずがない……)
そう判断した。
(いや、ウソというより、おそらく、組織のトップに、存在しない観念を……『神』という『高次概念そのもの』を置いているのだろう)
そういう巨大組織が身近にあるので、即座に理解できた。
レイモンドは、ほぼ確実に、フーマーのような宗教組織。
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