センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
12話 上級国民。
12話 上級国民。
(ついでだし、私たちを監視している連中に、その様子の一部を見せて、我々が『どれほどの悪』であるかをアピールしておきましょう。音声はカット、映像にも少しだけ加工処理を加えてもらえるかしら)
(かしこまりました。それでは、さっそく実行に――)
ジャミがそう言い切る前に、
(ああ、あなたたちは何もしなくていいわ。私がやるから)
(は……ぃや、しかし、このような些事に、ミシャンド/ラ様の手を煩わせるわけには――)
(いいのよ。少し運動したい気分だから)
(っっ?!)
(かっ……かしこまりました!)
ミシャから放たれているオーラの質が、凶悪なほどグンっと重くなったのを感じて、ジャミとバロールはそろって冷や汗を流した。
――ブチ切れている。
――理由は言うまでもない。
『冷たい緊張に拘束されているジャミとバロール』を背負っているミシャは、色のない笑顔のまま、空間系の魔法を発動させた。
ホアノスの地獄がはじまる。
★
――ホアノスは、いわゆる上級国民である。
仮に『これまでやってきた鬼畜的所業がすべてバレた』としても許される身分。
許されるというのは『法でそう決まっている』と言う訳ではなく、『逮捕されずに、コトの全てを隠蔽してもらえて、結果的に、なかった事にしてもらえる』という意味である。
子供を殺そうが、幼女を犯そうが、余裕で許される。
ホアノスには、それが許されるだけの下地がある。
ホアノスは優秀だった。
冒険者試験は一発合格、フーマー大学校では博士号を取得。
若くして議員に抜擢され、政治家としても非常に優秀だった。
『本物の政治能力』は持っていないが、『表層的な政治能力』は抜群だった。
だから、これまでは許されてきた。
しかし、彼はゼノリカに見つかった。
ゼノリカは、ホアノスのような穢れを許さない。
★
「――な、なにが……」
急に視界が歪んだかと思うと、目に映る風景が歪な配色になった。
妙に重ダルい圧に包まれ、全体的に感覚が少し麻痺している。
ふと、視線を背後に向けてみると、
そこには、ホアノスが厚い信頼を置く『忍』が倒れていた。
「お、おい、どうした?!」
慌てて駆け寄って、そう声をかけると、
「う……ぅーん……ん? ほ、ホアノス様?」
朦朧としているようだが、特にケガもなく無事らしい忍の姿を見てホっとするホアノス。
歪んだ獣欲に支配されている最低貴族のホアノスだが、
同じ趣味嗜好をもつ『彼』のことだけは友人として愛していた。
彼がさらってきた少女を、彼と共にいたぶっている間だけ、生きていると実感できる。
『弱さ』というオモチャを、狂気的に壊している間だけ、心の底から嗤う事ができる。
この二人はそういう人間だ。
「これは、この状況は……いったい……」
「さあ、私にも、何がなんだが――」
ホアノスが首をかしげた、その直後、
「あなたがカスで本当によかった。もし、『粛清対象者にカテゴライズされるほどのカス』でなければ、軽く御仕置きするくらいしか出来なかった」
『服をバカにされた』というだけでは粛清できない。
神が関わっている案件なので、『何もできない』というワケではないが、しかし、それだけだと『なんでも出来る』というワケではない。
「高みに立てばたつほど、不自由になってしまう。ああ……あなたがクズで、本当によかった。おかげで、私は、あなたに対して、どこまでも限りなく自由になれる」
そう言いながら、ミシャは、指の骨をポキっと可愛く鳴らす。
「拷問って、あんまりやった事がないから苦手だけど……まあ、頑張るわ。苦手な事であっても、頑張って克服するのが、私達ゼノリカだもの」
「こ、このガキ……なにをワケのわからんことをゴチャゴチャ……」
「理解がほしいなら、並べてあげる。私の空間魔法で、あなたたち二人を閉じ込めたの。そして、私は、これから、あなたたちを永遠の闇ですりつぶす」
「「……」」
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